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2012年7月18日 (水)

地熱発電のキャラクターは「マグマ大使」でキマリ

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 昨今の電力事情を考えて、原子力発電以外のさまざまな自然エネルギー(再利用可能エネルギー)を使った発電が脚光を浴びています。

 その中には、海に囲まれた日本が、ほんの数年前まで世界トップレベルであった、波力・潮力発電の技術もあります。

 いかなる政治力学が働いたのか、研究開発の補助金は打ち切られ、それ以来、真面目に研究する開発者は減り続け、今では、かつて技術的には後輩とみなしていた韓国から技術供与をうけるほどになってしまいました。

 もちろん、いわゆる自然エネルギー利用の発電には、未知の危険が伴います。

 たとえば、波力や潮力発電ならば、小規模の発電施設ならばともかく、欲をかいて(とは不適切な表現かもしれませんが)、海峡を覆うほど多数のマシンを配置したり、入江の近くに、巨大な波力発電島を建設したりしすぎると、海の水質や生態系に悪影響を及ぼすことがあるかもしれない。

 それらの影響調査を含めての研究開発であるわけです。

 同じように、近頃ではブーム化している感のある、太陽光パネルによる発電も、屋根の上に小さく設置する程度なら環境に影響はないでしょうが、何事も、極端に突っ走りがちな日本人の特性からして、やがては、「どこかの半島すべてを太陽光パネルで覆ったソーラーパネル・ペニンシュラを作りました」などということになりかねません。

 それほど大規模なパネルで大地を覆ってしまえば、気象にも何らかの影響をあたえることになるでしょう。

 地球上の自然現象は、それほど微妙なバランスの上になりたっているのです。

 わたしは、よく地球の自然系、生態系のバランスを、よく尖った針の上に精妙にバランスをとりながら乗せた「正方形のガラス板」のようにイメージします。

そのガラスの縁(へり)には、まわりの壁から伸びた無数の細いゴムがつけられ、針から滑り落ちないように、微妙にバランスを保たれている、そんなイメージです。

 少々、指でつついても、ガラス板の上で踊っても、これらのゴムが伸び縮みして、もとのバランスに戻してくれるものの――

 あまりに衝撃が大きすぎると、ガラスは下に落ちて粉々に砕けてしまう。


 我々は、産業革命以後の200年で、
「地球は我々が少々ヤンチャをしても、許し、受け入れてビクともしない」
なんてことはなく、すぐに、おかしな方向へ走ってしまう、精妙・脆弱なシロモノであることを知ってしまいました。

 では、エネルギー的にみて、地球『上』に影響を与えず、ヒトが使う程度のエネルギーを取り出す方法はないのか――

 それが、どうやらあるようなのですね。

 みなさんご存じのとおり、日本は地震大国、火山大国(多くは休火山)です。

 地熱研究の第一人者である、江原幸雄氏が「地熱エネルギー」(オーム社)で書いています。

 1.地球の中心温度は、6000度Cで、太陽の表面温度と同じである。

 2.地球の体積の99%は、1000度C以上だ。


 1はともかく、2は、「えっ」と驚かれる方も多いのではないでしょうか。

 99%って、ほとんど全部、それが1000度C以上――って、地面は別に熱くないじゃないの?

 それは、地球の巨大さを理解しておられないからです。

 ジェット機を使えば、一日もかからず地球の裏側に行ける世の中になり、「イッツ・ア・スモール・ワールド」、世界は小さくなったと感覚的には思うものの、実は地球は、太陽系でみても、かなり巨大な惑星なのです(太陽になれなかった惑星、木星と土星は別格として)。

 たとえば、あなたが、大富豪トレーシー一家(サンダーバード)の「ジェットモグラ」に乗って、6000メートル真下へ掘り進んだとして――

 中心までのたった0.1%に満たない距離しか進んでいないのです。

 それほど地中は深い。

 だから、われわれの地表の温度は10度C程度しかないのです。

 しかし、地面の隙間、裂け目を縫って、地下深くから、マグマ大使がやってくることがあります。

 これが地上に吹き出ると、火山の噴火ということになりますが、多くは、比較的地下深くに、「マグマ溜まり」となっています。

 そこへ、地下水が流れ込むと……高温の水と蒸気になり、「地熱貯留槽(ちねつちょりゅうそう)」が生みだされるのです。

 これを探し、蒸気と水を分離し、蒸気によってタービンを回し発電するのが、地熱発電です。

 風力発電と違って、持続・安定的に発電できる上、日本は火山国で、世界第三位の地熱資源国でもあるため、発電方法としては、かなり期待ができるのですが――


 温泉業者の人々の反対と、火山帯の多くが国立公園にあるために政府が乗り気でないという理由で、その利用は遅々として進んでいません。

 気持ちは分かります。

 政府の方は、ただの怠慢であると思いますが。

 地熱を利用することによって、保護しなければならない生態系や自然がダメージを受ける「かもしれない」というのなら、どこかで実験して、実際にどの程度のダメージを受けるかを調査するのが国の責任であり義務だからです。

 残念ながら、国の対応からは「面倒を避けたい」という印象しか受けません。


 一方、温泉業の人々の恐怖感は分かります。

 下手に、同じ源泉から発電所に蒸気を抜かれて温泉が出なくなったり、白かった湯が透明になってしまうと、数百年、それによって暮らしてきた生計(たつき)の道を閉ざされることになるのですから。

 原子力発電所立地村の人々同様、国全体のことや日本の未来より、現在の自分たちの生活を守りたくなるのは分かります。

 それが人間でしょう。

 ならば、彼らに迷惑をかけないような技術を開発すればよい、と技術者は考えます。

 地表近くの蒸気溜まりを取り合うから問題になるのです。

 もっと深くボーリングし、火山の近くでなくても地下の高熱の岩盤に水をそそぎ、地熱発電を可能にする。

 いまはまだ夢物語ですが、適切な国の補助があれば、必ず実現は可能でしょう。

 そして、それこそが、もっとも日本にふさわしいエネルギー計画であるはずです。

 早く、国がそれに気づいて、蓄電池に重点的に資本を投下する愚をやめ、地熱発電にも高額の補助を出してほしいものです。

 巨大な地球相手に、水をかけても、おそらくほとんど影響はないでしょうから。

 まさしく、アースが生んだ「正義」はマグマ~です。

p.s.
 もちろん、地中で温めた水蒸気は、タービンを回した後に、再び地中へ送られるのが絶対条件です。そのまま空中に逃がすと環境に影響がでそうですから。

 結局、あまりに大規模にやってしまえば、マントルやコア自体が冷えるという恐ろしい結果を招くでしょう――そこまではしませんよね。ヒトは。

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