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2012年6月23日 (土)

さらば愛しき魔女再び ~峰不二子という女~

 以前に、紹介した深夜アニメ「峰不二子という女」

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が、いよいよ佳境に入り、もうすぐ最終回を迎えます。

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 ワイルドで悪党のちょっと若いルパン、峰不二子を無垢の存在と勘違いし、あげくに女装までさせられる石川五右衛門、冷酷で権威主義的なエリート官憲(原作では東大を首席卒業)の銭形警部。

 第二シーズン以降のテレビシリーズ(赤ジャケットルパンです)と変わらないのは、相変わらず全てに甘い次元大介だけで、他は大幅なキャラクタ変更がなされた今回のシリーズは、思った通り賛否両論あるようです。

 もちろん、今回の作品は、原作の雰囲気を色濃く残した『大人向け』の作品ですから、それはそれでよいでしょう。

 ルパン三世という、巨大な作品群となったアニメ海に、一石を投じる意味では、悪くはない――が……

 「が」、です。ここからは個人的な感想に入ります。

 なんか違うんですよねぇ。

 峰不二子が、いわゆる性にだらしない女みたいに描くのはいい。
 誰かが書いていました。
 「若い頃なんだから、それぐらいやって、結果的に良い女になったんだろ」

 そりゃあ、そうでしょう。

 しかし、セクシーな描写が「病的なセクシー」だと気味が悪いんですねぇ。

 たとえば、緑ジャケットルパン(今回もそうですが):アニメ・ファースト・シーズンのワンシーン。

 峰不二子とルパンは、花畑で抱き合うと見せかけ、不二子はルパンの懐のワルサーを抜き、ルパンは不二子のスカートを引き上げて太もものホルスターに隠した銃を抜き、お互いの銃で、自分たちを狙う敵を撃ち殺します――ルパン三世の記念碑的なストーリー第三話「さらば愛しき魔女」でのシーン。

 この時のお色気は、まさしく直球の色気で、この回のヒロインが孤島に咲く花から生成される麻薬なしでは生きられない悲劇の「魔女」であることなど吹き飛ばすほどセクシーなシーンでした。

 「魔女」は病的でしたが、不二子のお色気は健康的なのですね。

 あるいは、峰不二子のかつての恋人で殺し屋のブーンが、不二子を奪いにくる「殺し屋はブルースを歌う」

 銃で撃たれ傷ついた不二子は、熱にうかされても色気があります。

 なぜならば、彼女の精神が(犯罪的ではあるものの)健全であるからです。


 なにが不気味かって、薬物などで精神を病んだ人間が剥き出しにする「歪んだ性欲」ほど不気味なものはありません。

 たとえば、麻薬で精神を蝕まれた女性が、薬の快感で身もだえしていたとして、それに色気を覚えるものでしょうか?


 よく「健康的なお色気」などといいますね。

 安易な表現であまり好きではないのですが、たしかに、お色気は健康的なほうがいい。

 翻(ひるがえ)って、今回の峰不二子を考えると、いやぁ、サイテーなほどに病的なんですね。

 子供の頃から、医療マフィアの実験施設で、麻薬の人体実験をされていた、というんですから、もう、どう判断したら良いのやら。

 あげく、自分と同じように、監禁され、虐待され、未来を奪われた(生きたアートにするべく全身に刺青をされた)女に対しては、近親憎悪のカタマリとなって、本当に殺そうと、「すわった目で」狂ったようにシュマイザー(古い?とにかくサブマシンガン)を撃ちまくるなんて。


 いったい、作者はどこから来てどこに向かおうとしているのでしょうか?

 いや、どこから来ているかはわかります。

 当然、アニメ、ファーストシーズンの先に紹介した「さらば愛しき魔女」から来ているのです。

 孤島の花から作られる麻薬、その人体実験にされた美しき魔女。もう、これ以外にないでしょう。

 だったら、パイカル(ファース・トシーズン第二話「魔術師と呼ばれた男」)出せや~

 と、大人げないこともいいたくなりますが……まあ、それはそれとして。


 かつて、作家の大藪春彦氏が、「ぼくは、固有名詞で女を語りたくない。たとえば、バルドーのような女、という表現は使いたくないんだ」と言っていました。

 まあ、わたしも、「誰々のような」という表現で、女性を描いたことはないと思いますが、それでも現時点で、五十代以下の道行く人に、ある女性を説明するのに、「峰不二子のような女」といえば、ほとんど一致した女性像が頭に浮かぶのではないでしょうか?

 それほど、峰不二子というキャラクターは、人々の脳に焼き付いている。


 なんだか、今回のアニメシリーズの女性監督の考えが、「これまでの不二子像を打ち砕き」「今まで誰も見たことのない不二子像を見せてやる」という点に向かい過ぎているような気がするのです。

 今まで誰も見たことのない、知らない峰不二子の「一面」なら、いくらでも見せてください。

 たとえば、逃走中に撃たれて傷ついたところを助けてくれ、かくまってくれた男が、今度は逆に病に倒れたので、若妻のようにかいがいしく世話をし、病が一段落して、男が感謝と愛のしるしに指輪を渡した時、やってきた追っ手を返り討ちにし……

「やっぱり駄目ね、わたしの手にはコルトの重みがしっくりくるもの。針とハサミより。でも、これでやっと退屈な奥さんの演技から解放されるわ。ああ、せいせいした」

 なんて憎まれ口を叩いて男のもとを去って行き――

 アジトに帰って「胸元から取り出した」指輪を眺めながら、「こんな小さなダイアの指輪は見たことがないわ」
 なんて鼻で笑いながら、一番大切な物をいれておく宝石箱の隅に放り込んで鍵をかける――

 なんて一面をね。

 だれが、クスリで幻覚三昧、人格操作までされ、金持ち伯爵のオモチャとしてスゴした人格破綻者の峰不二子を見たいと思うのでしょう。


 今回の峰不二子には、いまならHULUで観ることができる数少ない日本映画、松田優作の「野獣死すべし」(先に書いた大藪春彦の代表作です)を映画館で観た時の感想と同じ違和感を感じるのですね。

 その時、一緒に映画を観た友人(彼も大藪春彦の作品のファンでした)の第一声は、
「伊達邦彦も、とうとう精神病にされてしまったなぁ」

でしたから。

 あるいは――

 面白い話があります。

 男性は、片言で日本語を話す女性に好意を持ちやすい、というのですね。

 個人的には「言語不明瞭な人間」は苦手なのですが、意識して世間をみると、確かにそう考える人は多いようです。

 古くは欧陽菲菲やアグネスチャン、新しくは……知らないですが、片言の日本語で話す女性を好む男性は多い。

 それは、自分より不得意なものがある(この場合は日本語を話すこと)女性に対して、男性が簡単に優越感を持つことができるから、という理由らしいですが、本当なのかなぁ。

 どうもわたしにはよく分かりません。

 峰不二子に関しても、これまでの彼女は、パーフェクトな美人でした。
 頭もよく、時たま見せる、ちょっとしたドジさ加減も彼女の魅力を高めるスパイスにしか過ぎないほどの完成度。

 しかし、今回の不二子は、もう駄目です。

 精神はボロボロ、小娘(いや、実際、まだ若いのですが)のように、ぴーぴー、キャーキャー叫ぶだけで、個人的には、まったく魅力を感じません。

 しかし、人によっては、やっとフジコが自分の手の届くところまで降りてきてくれた、と感じる人もいるし、そう思わせるのが、今回の制作者の意図である……のかな、わからなくなってきました。


 もっとも、これまでの峰不二子も、宝石や現金、偽札の原板に目がないという弱点はもっていましたから、あまりかわらないかも――いややっぱり違いますね。


 最後にもうひとつ別な考えを述べて終わります。


 峰不二子を主役にした作品、と聞いて、最初に頭に浮かんだのは、「今の世の中で、それが通るの?」という考えでした。

 だって、ファーストシーズン以外の峰不二子像は、基本的に、セクシー女性キャラとしての役割だったでしょう。

 とにかく、視聴率を上げたければ、由美かおるの入浴シーンだ、的な。

 胸の大きく開いたドレスあるいは膝上30センチのミニスカートを見せるトルソーとしてのオンナ。

 そういった、かつてノーマ・ジーン(マリリン・モンロー)が演じさせられた、本来の彼女の性格とは違う、精神を無視した肉体だけの存在、女性をただの快楽の道具としてあつかうヒロイン像は、現代女性からの共感は得られないでしょう。

 だったら、峰不二子を、自分ではどうしようもない子供のころの不運から麻薬患者となり、人生を蹂躙(じゅうりん)された悲劇もデッチあげ、その呪われた軛(くびき)を断ち切って自由に生き、逆に男を翻弄する「ガラスの顎を持つヒロイン」として描いた方が、イマフウだと。

 いやいや、まさか本作の監督は、そんな計算高いことをしていないでしょう。

 監督が女流だと思うと、すぐにこういうヨコシマな考えにいたるからいけません。



 まあ、最終回を観てみないと評価はできませんが、現段階の「峰不二子という女」を一言でいえば、

「『さらば愛しき魔女』の呪いから逃れられない不健康なヒロイン」

ということになりましょうか。

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