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2012年6月23日 (土)

「読み聞かせ」その姿勢と技術と重要性

 我ながら、ものごころがついた頃から、かなり多くの本を読んできたように思います。
 
 小学校の時に、近くにできた図書館が新しく快適だったことも、その一因だったでしょう。

 図書館一階のジュブナイル(児童文学)コーナーの本は、巡回図書以外ならほとんど読み尽くした記憶があります。

 なぜ、そんなことをしてしまったかというと、楽しかったからです。

  しかし、その本を、物語を読む楽しさを知ることになった、最初のさいしょのはじまりのきっかけは何かと考えると、物心がつく前から繰り返しおこなわれていた、祖母による「就寝前のおはなし」であったように思います。

 以前にも書きましたが、詩人、金子みすゞと郷里を同じにする(山口県仙崎村)祖母は、彼女に憧れ、彼女のようになりたくて、神戸に出たのでした

 残念ながら、夢は叶わなかったようですが、死ぬまで祖母は、自分で物語をつくることを楽しんでいました。

 晩年は、専(もっぱ)ら、わたしたち孫専属の「語り部」となっていましたが、毎晩のように続く彼女のはなしは、同じものがほとんどなく、まるでシェエラザードの紡ぐはなしに耳を傾ける、シャフリヤール王(こまっしゃくれて、ヘンクツさという点では、わたしも、かの王様と同じような子供でした)のように夜の来るのを待っていました。

 祖母は、今までにある話、あるいは自分が経験した話を、様々にアレンジしてバリエーションを増やして語り聞かせる、という方法をとっていました。

 六歳の時に、子供ばかりの姉妹三人で用事を頼まれ、仙崎まで船にのって(祖母の生家は、仙崎の横にある青海島の北の端にあります)行き、日が暮れての帰り道、島南端の港まで送ってもらって、あとは陸路を帰る途中に出会った「山賊」のはなし(今思うと「追いはぎ」だと思いますが彼女はそういっていました)は、なんど聞いても、恐ろしくおかしい話でした。

 今思えば、あの「語り聞かせ」が、わたしの物語好きを、かたち作ったのだと思います。



 近頃、小学校や公民館で、子供や老人を相手に物語を「読み聞かせる」催しがあります。

 子供向けには、絵本を読むことが多いようですが、その読み聞かせるべき本と方法を細かく指南している本があります。

「小学校での読み聞かせガイド」(湯沢朱実ほか編・ブックプランニング遊)です。

 四人の著者は、長らく読み聞かせをしてきた語り手や司書たちです。

 司書については、その重要性と、文化系大学のカリキュラムについてくる「司書資格」を、ただ安上がりだからという理由だけで使う、アルバイト司書の問題点についてなど、別項で書こうと思っています。

 それはともかく、著者たちは、小学校1~6年までの学年ごとに297冊もの読むべき本を紹介してくれます。

 これから、読み聞かせをしようと思う人でなくても、昔読んだ本を懐かしく思い出すためのテキストとなりそうです。

 しかし、それより興味深いのは、彼らがこれまでに培った「読み聞かせノウハウ」です。

 「読み聞かせ」をただ「絵本を読むこと」と考えると大間違い、気まぐれで飽き性の子供はすぐに興味を失ってしまう、と彼らはいいます。

 本はどう持つのか、立って読むのか座って読むのか、この本は細かく指南してくれます。



 単純に考えてみても、人の発する言葉を「理解」し、「想像力を働かせ」てイメージ化し、恐がり、悲しみ、楽しむ……なんという脳機能の高次利用でしょう。

 子供には、言語野を含む、さまざまな脳機能の「刺激」と「発達」をうながし、老人には、機能を衰えを防ぐ得難い方法であることは、容易に想像できます。

 かつて、朗読は、重要な文化事業、いや娯楽でした。

 「赤毛のアン」では、プロの朗読家が、彼女たちの住むアヴォンリー近くのホテルにやってきて朗読会をし、皆は着飾って出かけるのです。

 大画面のテレビが登場し、インターネットでインタラクティヴ(相互通行可能)な情報を手に入れることができたとしても、「読み聞かせ」の重要性と楽しさは、少しも衰えることはないでしょう。

 これを機会に、みなさんも、昔よんだ絵本でも引っ張り出して、読み返してみてください。

 わたしは、さきほど、書庫の奥から「もちもちの木」を持ち出してきました。

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