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2012年5月30日 (水)

うなぎは本当にうまいのか? ~うな丼並780円 すき家~

 すき家のうな丼並盛りが780円で、高すぎると評判になっています。

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 すき家といえば、「安くて腹のふくれるメニュー」が多い、給料前のサラリーマンの味方、のはず、であれば、確かに写真でみる限り少々高いような気もします。

 理由は、うなぎ自体の高騰にあるとのことで、昨年より100円高くなっているのだそうです。

 うなぎに関していえば、かつて、疑惑をもたれた中国の薬漬け(抗生物質の)プール養殖についてなど、書きたいことはいろいろありますが、今はやめておいて……

 ひとつだけ書いておきたいのは――うなぎって、本当にそれほどおいしいものなのでしょうか?

 以下は、わたしの独断と偏見ですので、どうかお腹立ちにならないでください。

 恥ずかしながら、わたしは食事に関しては栄養第一主義なので、もうひとつ細かいおいしさ、味の違いがわからないことが多いのです。

 だから、うなぎや鮨のうまさがもうひとつわからない。

 江戸時代初期の小説を書いていると、知識と感情がミックスされて、当時の生活に感化されることがあります。

 LEDの灯りのともる家にいながらも、貧しい長屋に暮らす話を書いていると、部屋は魚油のサカナくさい臭いでおおわれ、人の顔は妙に黒く(幕末、明治時代の人々の写真などでは、みな黒い顔をしていますね。あんな感じ)見え、家の外は、まっくらで街灯もない、といった気持ちになるのですね。

 江戸時代を舞台にした小説で食べ物を描こうとすると、川や江戸前でとれるシジミやあさりは庶民の生活、船でとる鯛などは金持ちの食べ物、というハラができていないと生活感がでない。

 まあ、中には「自分は、江戸も現代も同じ感覚で書いている」という作家もいますが、そういう人の作品では、平気で町民が武士に啖呵をきってしまったりします。

 殺されるって……

 江戸時代中期までは、うなぎは泥臭く、まずい下魚あつかいでした。

 実際、そのまま食べてすばらしく美味ということはないでしょう。

 ウナギについては、あの有名な平賀源内の「土用の丑の日」という話がありますが、それはおいておいて、個人的には、タレの工夫によって、江戸時代にウナギ人気は上がったのだと思います。

 もちろん、サバキ方、焼き方に独特の工夫がなされているのは知っていますが、やはり人は味に飛びつくものです。

 ポイントはタレですよ、タレ。

 上方、江戸落語ともに、「砂糖をはりこんでおいしく作った料理」という表現がありますが、昔の人にとって、サトウキビから作る砂糖は高級品であり、最高級の調味料だったのですね。

 食即エネルギーの糖分(砂糖)は、多くの動物にとって美味らしい。

 山岳地帯などで荷物を運ぶ馬にしても、重労働に対する褒美は砂糖であるといいます。

 その砂糖をふんだんに「はりこん」で、醤油(アミノ酸のかたまり、これも生物にとっては美味しい)とともに煮込んだ「秘伝のタレ」をかけるのだから、少々ドロくさかろうが、油が多かろうが(蒲焼きすることで油も落としす工夫もされています)、おいしくいただくことができるでしょう。

 ご存じの方もおられるでしょう。

 よいウナギのタレは、ウナギがなくても、ご飯にかけるだけでおいしい……

 もう一度書きます。

 長らく、ウナギはドロ臭く、江戸っ子の口にはあわないものとして、無視されてきました。

 やっと、味と焼き方に工夫をこらしても、長らくしみついた「うなぎ自体の味」への偏見は変わらなかった。

 さきの「土用の丑の日キャンペーン」がなされる前であれば、砂糖と醤油であまからく煮込んだ上に、さまざまな薬味を加えた(その多くは、十年以上使い続けたタレをベースにしてある)「高価なタレ」をかけてすら、

「んな暑い時期に、あんなアブラっこいものたべられっかよ、ちくしょーメー」

と、見向きもされなかったといわれているのです。

 それがいつのまにか、ウナギ自体が美味とされ、ウナギをうまいというのが当たり前で、天然ものが少なくなれば養殖ものへシフトし、国内で育てるのがコスト高になると、中国産を仕入れ……

 なんだか、うな丼が高級食になってしまっているのですね。

 だから、すき家ですら、かなり高い値段設定になってしまう。

 このあたりは、江戸前と呼ばれる「江戸湾でとれた魚」を、新鮮さを生かしてさっとさばき、酢飯にのせて食べさせた「江戸前の鮨」が、いつのまにか高級食扱いされ、スシ職人が客に説教するなどというフザケタ事例すらある、スシ界と同じ、勘違いぶりを感じますね。

 まあ、そういった『高級鮨』に対しては、回転寿司が、高級ウナギ店に対しては、すき家のうな丼が生まれたのでしょう。

 そのすき家にしてからが、値段設定が高すぎるのです。

 今後は、品不足が心配されるトロも含めて、ウナギも、あまり飛びついて食べようとしない方が良いような気がします。

 うなぎの味のおいしさはタレのおいしさなのです。

 上に書いたように、もともと、江戸時代にタレと製法が完成されるまでは、江戸っ子が見向きもしなかった魚類なのですから。

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