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2010年12月31日 (金)

ナニワのことも夢のまた夢 ~インセプション~

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 映画「インセプション」を観ました。

 公開当時から、コムツカシクて、よく分からないとの評判であったため敬遠していたのですが、「シャッター アイランド」で、ディカプリオが、ギルバート・グレイプの頃の演技派魂を取り戻したように見えたため(いや、「ギャング オブ ニューヨーク」では意気込みが空回りしていたというべきか、「仮面の男」や「キャッチミー~」は監督と脚本がタコだったから仕方がないと思いますが、それでも、エージェントと共に、きちんとホンを読んで仕事を選ばなかった彼が悪い)、DVDレンタルの開始と共に借りて観たのです。

 結論から言いましょう。

 ナカナカ良いです。

 「バニラ・スカイ」的というか、「オープン・ユア・アイズ」的というか、「胡蝶の夢」的というか、わたしの「蒼い虎」的というか、随分前に書いたものの、まだ公開していない自著「シーシュポスの夢」的というか……

 なんていっても、わかりませんね。

 一応、惹句(コピー)を書かせてもらえれば……

――その時代、長期宇宙飛行の冷凍睡眠中、脳機能維持の刺激を与えるために、乗組員は、宇宙船のコンピュータ上に作られた「自分のためだけの」世界で、暮らすようになっていた。

 ある者は、衛星カリストの歓楽街に住み、またある者は摩天楼のあったころのニューヨークで芸術家となり、あるものは日本の江戸時代でハタモト武士となって暮らしている。
 しかし、いつからか彼らは自分たちが、本当は何者であるかを忘れてしまっていた。

 そして、彼らの世界を、悪夢が蝕み始める。

 NYに住むものには911の悪夢が、江戸に住む者には富士山の噴火と大地震・大火が、カリストには、記録に残っている歴史上最大の隕石衝突が襲いかかるのだ。

 6人の乗組員たちは、自分が何者かも知らないまま、その天変地異に立ち向かおうとする。何が起ころうとも、その世界で自然と中心人物になってしまう設定のままに……

 その異変は、乗組員の誰かが「ある目的のため」に、船のコンピュータに仕掛けたシーシュポス・ウイルスが原因だった――

てな具合ですね。

 なんて、宣伝をしている場合ではなかった。

 インセプションについて書いていたのです。

 上で、なかなか良かった、と書きました。

 ご存じの方も多いでしょうか、インセプションは、夢を用いて「人の記憶を盗み出す」非合法活動をする男が主人公の物語です。

 時代設定は現代と同じようですが、どうやら、そういった技術だけが突出して進んだ、平行世界(パラレルワールド)が舞台です。

 「盗み出す」方を「エクストラクト」と呼び、記憶を植え付ける方を「インセプション」というのですね。

 「記憶を盗み出す」方はわかります。だって、企業秘密であれ、個人秘密であれ、人は他人の秘密を知りたがるものです。実際金にもなりますし。

 しかし、「記憶の植付け」とは?
 頭の中に、今後の彼の行動を動機づけるタネを植えるということですね。

 映画中では、「エクストラクトは簡単で皆やっているが、インセプションは難しいぞ」と、いわれるのですが、なぜそうなのかは語られません。

 個人的には、植え付けの方が簡単なような気がします。

 どちらかといえば、植え付けた記憶が、人にどのような行動を引き起こすかの方が問題でしょう。

 正しいベクトルを与えてやらないと、間違った方向へ、間違った強度に進んでしまうことになる。

 実際、ディカプリオも「インセプション」は可能だ、が、それ以後が難しいのだ、といいます。

 彼には、過去に行った「インセプション」の苦い記憶とトラウマがあるのです。

 面白いと思ったのは、ベスターの「虎よ!虎よ!」で、テレポートの発達した時代にあって、無断進入を防ぐために自宅を迷路のようにして、テレポート先の位置を複雑にしたように、インセプションの世界では、金持ちや重要人物たちは、エクストラクトを防ぐために、深く強い暗示を掛けられているということです。

 具体的には、盗み出す側が「設計」した夢の世界に被害者が引き込まれると、自動的に彼の潜在意識が、SPや兵隊となって、夢の中で敵を殲滅(せんめつ)するのです。

 コンピュータにおける防衛障壁(ファイアウォール)のようなものでしょうか。いや、人の肉体における白血球に近いかな。

 殺された敵は、実際には死ぬことはなく、ただ目覚めてしまう。

 面白かった二つめは、夢を一重(本来、この書き方はおかしいのですが)でなく、二重、三重と「夢の中の夢」と深化させていくという設定です。

 そして、体感時間は、夢の深度が深くなればなるほど、ゆっくりと流れる。

 これはなんとなく実感に近いですね。

 夢では何日か過ぎても、目が覚めると数分だったりすることはよくありますから。

「インセプション」では、第三段階の夢になると、実時間の数時間が十年にも相当するといっていました。

 さらに面白いのは、上の階、つまり自分の夢の上の段階、一重の夢なら実際の肉体の刺激が、二重の夢なら一重の夢の刺激が、遠い残照のように、その世界に影響を与えることです。

 具体的にいえば、実際の肉体が揺すられれば、一重の夢では大地震が起こるのです。

その下の階層の二重の夢なら、ちょっと建物が揺れる。

 これは、夢が深くなれば、体感時間が数十分の一になるという設定にあっています。

 現実の「一瞬」が、夢の夢では「数時間」になるのですから、体が揺れても、その影響は小さくなるのは道理です。

 そして、夢の夢の夢(第三段階)に落ちてしまって、戻れなくなると、現実の数時間で、数十年もの時を夢の中で過ごすことになる。

 ああ、それでわかった。このインセプションの設定は、その根っこにおいて、スタートレック・ネクストジェネレーションの最高傑作と言われている、第五シーズン125話の「The Inner Light(邦題:超時空惑星カターン)」と同じものなのですね。

 数多あるスタートレック・シリーズの中で、人気投票をすると、必ずダントツで一位となるこのエピソード、わたしも初めて観た時は泣いてしまいました。これぞ、SFにおける「胡蝶の夢」と、長らくその影響にあったものです。

 原題の「The Inner Light」は、すっきりとして内容を言い得ているのですが、邦題がいけない。いったい、どこのバカ(失礼)がこんなセンスのないタイトルをつけたんだ?という感じです。

 機会があれば、ぜひご覧ください。スタートレックシリーズをご存じ無い方も楽しめると思います。

 そしてもう一つ、これもスタートレック・ボイジャーの傑作だと個人的に思っている第二シーズン40話の「The Thaw(邦題:悪夢の世界)」にも似ています。

 これこそは、マシンを使って、人と人が夢でつながる宇宙ステーションに魔のクラウン(ピエロ)が現れて、人々を殺していく話です。

 こちらはインセプションと違って、殺されたら現実の肉体も死んでしまうという設定でした。

 スペイン映画「OPEN YOURE YES」やリメイクされたトム・クルーズの「バニラ・スカイ」とも重なるところはあります。

 と、先達のさまざまなアイデアをイイトコ取りして作られたインセプション。

 何より素晴らしい点は、終わってみても、アカラサマに悪いヤツがいない点です。

 それでいて、なんだかスッキリと良い気分になれる。

 渡辺謙はイイ役どころをもらったなぁ。
 バットマン・ビギンズの訳のわからん役とは大違いです。

 映画を見終わって、わたしも、ディカプリオが持っていたあのベーゴマみたいなコマが欲しくなりました。

 公開時には売られていたのかな?

 そうそう、個人的には、この映画でわたしは、初めて「キチンとした無重力状態での格闘」を目にしたような気がします(観たヒトはわかりますね)。

 とにかく、年末年始に観ても、嫌な気分にならない映画なので、お勧めです。

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