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2010年7月 4日 (日)

「予測市場」とアキレスと亀

 みなさんは、おそらく「アキレスと亀」という話をご存じでしょう。

 ビートたけしの映画の話ではありません。

 いわゆる「ゼノンの(運動)パラドックス」と呼ばれるアレです。

 「いわずもがな」の寓話?ですが一応書いておくと……

 足の速いアキレスと、ノロマな亀が競争をした。

 亀は、ハンデとして、アキレスより進んだ地点(地点α)から出発する権利を得た。

 二人は同時にスタートする。

 アキレスが、亀のスタートした地点αに到着した時、亀は、アキレスがそこに到着するまでにかかった時間だけ、アキレスより先に進んでいる(地点β)。

 次にアキレスがβまで進むと、亀はアキレスがα→βまでかかった時間分、アキレスより先に進んでいる(地点γ)。

 アキレスがγまで進むと、さらに亀はその先を進んでいる。

 この考えは、際限なくくり返し進めることができるため、足の速いアキレスは、いつまでたっても、ノロマな亀に追いつくことはできない。

 これは、もちろん詭弁です。

 このパラドックス寓話の面白い点は、いや巧妙な点は、結論が「いかにもアンリアル」なものであるにも関わらず、それを導く過程が、「いかにも論理的で正しく」見えることなのです。

 なぜ、こんな話を書いたかというと、先日、「新しい世論調査の方法」として「選挙における予測市場」というモノがあるということを聞いたからです。

 それは、参加者が「仮想の株式(バーチャル・トレード)を取引することによって、市場を予測するという考えに基づいたものです。

 その例として、某大学准教授という人物が、持ち出した典型例が以下です。

1.明日雨天になる場合に「100円を受け取れる」証券(チケット)を売り出す。
  これはつまり、「晴れれば紙くず(0円)になるチケット」ですね。

 実際に現実のカネで売り出すのではなく、「ネット上のゲーム」として、参加することで手に入る「仮想マネー」を使って、ゲーム内で売り買いするということです。 

2.参加者は、現在の価格が自分の予想より安ければ買う、高ければ売る。

 つまり、明日、雨になるだろうという天気予報をみたり、ゲタを投げたりして、明日が雨になる確率が高そうだと思う時、ネット市場にチケットが60円で売られていたら、40円の儲けになるから、それを買うということです。ゲームは「儲けること」が目的ですから。

 逆に、明らかに明日晴れると思うなら、紙くずになる前に、30円でも良いから売ってしまうに違いない。

3.その結果の「取引価格」を「雨天になる確率」として扱う。

 つまり、皆が「明日雨になる」と考えるなら、チケットの値段は限りなく雨の時に換金される100円に近くなるし、「晴れる」と考えるなら、晴れの時のチケット価格0円に近くなるだろう。

 つまり、最終的な、そのチケット価格0-100円が、降雨確率0-100%に対応すると考えるわけです。

 チケットの最終価格が60円なら、明日の降雨確率は60%というわけです。

 どうです?なんとなく、ゼノン的パラドックスを感じませんか?

 こういった「全てをゼニカネのやりとりに帰結させる」という思考は、いかにも拝金主義者の米経済学者が考えそうな感じがしますが、実際に、20年ほど前から、アメリカの「実験経済学」の研究者によって進化させられてきた考え方だそうです。

 実際に普及しだしたのは、例によって、インターネットの普及にともなってのことだそうですが、近年、アメリカではポピュラーな手法になりつつありそうです。

 その准教授は、対象と方法を選びさえすれば、かなり正確な予測値を得られると胸をはりますが、上の例では、いかにも例えが悪いような気がしますね。

 天気は、純粋に物理的な、いや自然現象的なものです。

 人によって動かしがたいところがある。

 実際には自然現象でなく、「選挙でどの政党が勝つか」や「アカデミー賞は、どの映画がなに部門をとるか」といった、人の思惑(おもわく)で決まる出来事の予測に力を発揮するそうです。

 ある事柄について(たとえば、次の選挙でどの政党が勝つか?など)、予測市場(以下で説明)をたてて、そこで売買される証券の最終価格をもって、確率とする。

【予測市場】
 問題の顛末(てんまつ)を価値に連動させた証券を取引する市場

 つまり、仮想市場で、ある政党が勝つなら100円もらえて、負けたらタダになるような金券を発行し、自由に売り買いさせて、その金券の最終価格をもって、その政党の勝利パーセントとする(ひどく簡略化させていますが)ということです。

 これの長所は、昨今、勝間氏などもよく言及するネット上の「集合知」を使うことができる点です。

 いわゆる、どこかの本のタイトルにもあった「みんなの意見は案外正しい」という考えですね。

 白亜の研究者による専門知識より、一般人の感覚、あるいは市井(しせい)の在野(ざいや)研究者の知識の方が正しいことがある、という考えですね。

 ボトムズによるワイズマンというところですか?
 あるいはガサラキにおける「超高度な謎の知的生命体10億体」かな?

 面白いのは、この場合の「集合知」が、ウィキペディアのような、知識の静的(スタティック)な寄せ集めである「ストック知」ではなく、時々刻々変化する動的(ダイナミック)な「フロー知」であるということです。

 静的知なら、かなり固定的ですが、動的知なら、その時のキブン、雰囲気、マスコミのミスリードで、次々と価格が変わることがある。

 ありきたりな言い方をすれば、時代の空気を読んだ結果になる、ということです。

 もっとも、個人的な感触としては、これには懐疑的です。

 上記にある「問題の顛末を価値に連動させた証券」をうまく発行するためには、その「問題の顛末(てんまつ)」が、「明日、雨か晴れか」などの単純なものならともかく、複雑なものであればあるほど、予測市場をたてる側の「問題の簡略化」に高度なセンスを要求するだろうというのが第一。

 それほどの才能があるのかなぁ。

 そして、第二として、ヒトの寄せ集めである「集合知」には、為(ため)にする意思、特定の政党・人物に悪意を持った個人、ただ面白ければ良いという、愉快犯(間違った使い方)的個人も多く存在し、そういった一握りの人々のアジテーション(扇動)によって、市場価格が変わってしまうことがあると思うからです。

 某教授によれば、そういった「悪意をもった個人」による価格操作までをも含め、現実的には正確な数値が出るというのですが、本当なのでしょうか?

 いわゆる「数学におけるリミット無限大」、限りなくサンプル数を増やしていけば、そういった個人の思惑は、許容誤差として処理できるようになるかもしれません。

 しかし、少なくとも、現時点での、ネット上かつ仮想ゲームの中での、少ない(5000人程度だそうです)参加人数におけるマネー・ゲームによる予測市場は、あまり信頼できないとわたしは思います。

 今後、もっと、人々に集合知の意義と意味が広く認知され、悪意あるアジテーションが影を潜め、主催者側が、センス良く予測市場をたてることができれば、あるいはツカエルようになるかもしれませんが……無理でしょうねぇ。

 グレシャムのいうように「悪貨は良貨を駆逐」し、大衆は低いレベルで一定となってしまうでしょうから。

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