« ぼろぼろな矜持(プライド) | トップページ | にぬき (自作小説:PDF 推理小説 原稿用紙換算枚数92枚) »

2010年7月10日 (土)

愛国者は(ボニーと)クラウドを殺すか?

 ボニー&クライドといえば、ウォーレン・ベイティ(かつてはビーティといったのに……リーガン元大統領と同様、知らぬ間に呼び名がかわった?)、フェイ・ダナウェイ主演(とジーン・ハックマンがチョイ役)の名作、「俺たちに明日はない」の原題ですが、内容はご存じでしょう。

 1967年の映画です。

163

 アメリカに実在したチンピラ強盗カップル(バカで愚かだけど、どこかカッコいいんだよなぁ)の生き様を描いた作品で、当時、ワーナーはB級作品としてしか見ておらず、ドライブイン・シアター(最近見かけないな。皆さんは観に行ったことあります?)用としてのみの公開予定であったものの、いざフタを開けてみると……といういつものパターンです。

 ラスト、若く美しい(フェイ・ダナウェイは美しいというより、コケットな魅力が強かったな。有り体にいって実際に残るホンモノのボニー・エリザベス・パーカーの方が美しい)二人の肉体が、数多くの銃弾によって肉片となるシーンは、映画史に残るものとなりました。(以下の画像は共にWIKIより)

161

 その二人に、「正義と愛国者の名のもと」に、全身87発の銃弾を打ち込んだのが、アメリカのレンジャーと警官たちです。

162

 圧倒的に戦力差があるのですから、逮捕もできたはずなのに、彼らは、二人の全身に銃弾を撃ち込んで殺してしまった。

 いかにも、ガンによって建国された国らしい態度です。

 さて、ここからが本題です。

 今回はクライド、ではなく「クラウド」について書きます。

 最近、よく聞きますよね。

 クラウド・コンピューティング。

 クラウドってのは、まあ雲のことですね。「曇り」のクラウディと同じ語源です。

 わたしが、はじめてクラウドの名を聞いた時、その意味は、サーバー企業が「あまり混雑しない時間帯」に「あまったメモリ空間」を、割安で使ってもらう、というコンセプトでした。

 その後、クラウド・コンピューティングの信奉者たちが、

「クラウドすごいぜ。自前でサーバーを持たなくても、いろんなことができて、しかも、すぐに利用できるツールが充実しているから、やりたいことがカンタンにできてしまうんだ。例のエコポイントも、クラウド・コンピューティング(とその既製ツール)がなければ、あれほどすぐに、ジコーセイケンが実行できなかったハズ」

などというのを聞いて、何がクラウドなのか、正しく、雲か霧のごとくに茫洋(ぼうよう)とした、曖昧模糊(あいまいもこ)な気持ちになってしまいました。

 んが、結局、少し調べてみると、どっちも同じコトをいってるんですね。

 最初にわたしが聞いたのは、サーバー経営者側から見たクラウド~で、後者は、利用者側からみたクラウド~。

 同じモノを両サイドから表現していたのです。

 しかし、そのどちらもが、クラウドの危険性を忘れているか、気づかないふりをしています。

 現在では、クラウド・コンピューティングは、もう少し正確に描写されて、一般に、自前でなく、ネットワークの向こう側に、

「ハードやソフトに限らず、データベース・ソフトやビジネス・ロジックやAPI、ユーザインタフェース、セキュリティ、バックアップ、災害対策システムまで、標準のサービスとして提供されたシステム」

という程度の認識になっていると思いますが、これに加えて、従来のネットワークでは考えられなかった、「命より大切な生データ」のストレージサービス、つまり保管までもが、ネットワークを通じて「こちら」ではなく「向こう側」で為されるという点は、特筆すべきだと思います。

 上でずらっと書いたように、確かにクラウド・コンピューティング(以下クラウドと記載)は、便利で安上がり、しかも、いろいろと既製品が用意されているので、コスト削減とサービス・システムの開発期間の短縮ができるという、金儲けが目的のビジネスとしては、ふんだりけったり、じゃなくて、願ったりかなったりのシステムなのです。

 しかし、わたしの好きな格言のひとつに、

「目に見えないものは信じるな」(ネイティブ・アメリカン)

というものがありますが、正しく、クラウドがそれですね。

 上記のように、クラウド・コンピューティングの語源は「クラウド」、雲というか、水蒸気様のとりとめのないカタマリという意味なのですが、そんなあやふやなものに、大切な生データを保管させてよいものなのか?

 妙な話ですが、もし、そのクラウドを展開する会社が、世界的にサーバーを分散して設置しているならば、データのある部分はシンガポールに、他の部分はマレーシアに、その他の部分はアメリカのシカゴに、ということがあり得るのです。

 まさしく、雲、どこにあるか分からない。

 その本来、雲のジュウザのごとく自由であるべき「クラウド」に、愛国者たちが銃を向けたならどうなるか?

 87発の銃弾で、蜂の巣にされてしまうのか?

 申し訳ありませんでした。

 こんな例えではまるでわからないでしょう。

 もう少し詳しく書きます。

 そもそも、米国には、ある「恐ろしい法律」があります。

 かつて日本に存在した、あの、赤紙一枚で誰でもひっぱれた「国家総動員法」に匹敵するような強烈な法律が。

 その名は「米国愛国者法」

 愛国心は多少なりとも持つべきだと思いますが、「愛国者」となると、どうも国の為政者(いせいしゃ)側からの押しつけを感じてコワイですね。

 その国に住むなら、国に対する忠誠心と愛国心を持つべきだ、という。

 ともあれ、米国愛国者法――

 ガンズ オブ パトリオット……ではなくて、USA PATRIOT Actと呼ばれる、「あの」パパ・ブッシュじゃない方の、バカ・ブッシュが2001年に署名発行した連邦議会制定法です。

 これを使えば、FBIや連邦当局が、この「データには問題がある」いわゆる「テロくさい」と考えるだけで、カンタンにサーバーをこじ開けて、データを取り出すことができる。

 つまり、もし日本の国、あるいは企業の重要データが、クラウド内のストレージに保管されていて、それが米国内にあれば、いともカンタンに、彼らをそれを見ることができるのです。

 ホント、こんな危ないものを利用するヤツの気がしれんよ。

 だいたい、アメリカは、政府としてクラウドを利用する時は、その条件として、「サーバーがアメリカ本土にあること」としているのです。

 本土、つまりハワイじゃダメということです。

 シギント(SIGINT; signal intelligence:通信、電磁波、信号等を媒介とした諜報活動)に長けた彼らは、クラウドの危うさをよく知っている。

 もちろん、日本の総務省あたりはその危険性に気づいていて、一時期、北海道に巨大サーバーセンターを作って、日本のクラウド事業をそこで展開しようとさせていました。

 今は、またその場所は変更されつつあるようですが、ともかく、国は問題意識をもっている。

 しかし、中小企業のオヤジ社長や地方自治体など、ネットに暗い人たちは、ただ安さと便利さに飛びついて、安全性を忘れている可能性が高い。

 危ないなあ。

 このところ米ソを騒がせていた、スパイの話は、ご存じですね。

 例の美人スパイってやつ。

 その米ソ双方のスパイの交換 SWAPPING SPY が、今日、行われたようです。

 冷戦後、ああいった、あからさまな国家間のエスピオナージュが、長らく行われなかった理由のひとつは、そういった情報の奪い合いが、主に企業間でなされるようになっていたからです。

 ちょっとしたテクノロジ、ニューデザインひとつに、その企業の浮沈(ふちん)がかかっています。

 いまこの瞬間にも、アジアを中心とした世界中の企業間で、情報の盗みあいが行われている。

 なのに、ああ、ああ、それのなのに!

 安易なクラウド礼賛にのっかって、どこの馬のカイバかもわからない記憶装置に、重要機密を含むデータを管理させるなんて……

 それだけではなく、世界中に分散したサーバやデータに問題が生じた時、いったい誰が責任をタンポするかさえ決まっていないのです。

 そういった国際的な法整備がまるでなされていないのに、喜んでそんな「目に見えないモノ」に飛びつくのは愚か者のすることです。

 愛国者の光り輝く銃で、チンピラ・クラウドが蜂の巣にされてからでは遅いのですから。

|

« ぼろぼろな矜持(プライド) | トップページ | にぬき (自作小説:PDF 推理小説 原稿用紙換算枚数92枚) »

コンピュータのことども」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/159899/48842178

この記事へのトラックバック一覧です: 愛国者は(ボニーと)クラウドを殺すか?:

« ぼろぼろな矜持(プライド) | トップページ | にぬき (自作小説:PDF 推理小説 原稿用紙換算枚数92枚) »