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2010年3月 2日 (火)

造られた戦場:その場にいて震えあがる意味

 いまさらですが、映画「ブラック・ホークダウン」を見ました。

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 先日、年下の友人と「メタルギアソリッド2」の話をしていた時に、局地戦を描いた戦争映画としてはかなり良いできで、「物語性」を極力排して事実を追いかけているし、武器の選定からヘリコプターその他の装備にいたるまで、かなり現実に近い正確な描写をしているから一度観てみると良いですよ、と勧められたからです。

 彼はいわゆる「ミリタリー好き」で、そういったものにうるさい。

 その彼がいうなら、観てみてもよいかなと思い、DVDを借りてきました。

「ブラックホーク・ダウン」は、2001年のハリウッド映画です。

 実際に、1993年にソマリアで起こった多国籍軍とゲリラの戦闘、いわゆる「モガディッシュの戦闘」を描いてます。

 監督は「エイリアン」「ブレード・ランナー」のリドリー・スコットで、この映画を撮るにあたって、友人のいうように状況説明を極力なくして戦闘自体を映像で見せる、という手法に徹しています。

 映画の中に英雄は登場せず、また作戦自体もMH-60Lブラックホーク(多用途=戦闘ヘリコプター)をゲリラのRPG-7(無反動砲)の攻撃によって撃墜されて、失敗におわるというストーリーで、観終わってスカッとするものではない。

 だから、バイオレンス・ファンタシーとしての戦争映画ではない。

 まさしく、ブラックホークがダウン(墜落)させられる映画なのです。

 という程度の知識は漠然とあったのですが(一応、リドリー・スコットのファンなので)、これまでは、すすんで映画館に行ったりDVDを借りたりすることはありませんでした。

 そもそも戦争が好きでは無いからです。

 銃やRPG-7などの、メカニックとしての武器は魅力的だと思いますが、その用途を考えると知識を持っているだけにしておきたいものだ、と考えます。

 実際、このあいだ借りて、少しだけプレイしてみた「コール・オブ・デューティ2」(PS2用ソフト)は、第二次世界大戦の一兵卒の目から軍事行動に参加する内容でしたが、攻撃してくる超リアルなドイツ兵を撃つのが嫌で、キャンペーン1すらクリアせずに返してしまいました。

 あまりにリアル過ぎて、あのような疑似体験を繰り返していたら、いつのまにかタブーの敷居が低くなって、人に対して刃物や銃口を向けることに対する抵抗感がなくなってしまいそうな気がしたからです。

 メタルギアソリッド2の場合は、使うのは麻酔銃で、不殺クリアも目指せる作品になっているため、それほど抵抗感はなかったのですが……

 もちろん、映画となれば、話は違います。

 通常では味わえない、銃弾飛びかう緊張感を疑似体験しつつ、こういった極限状態では自分はどんな行動をとるだろうか、と自問することができるのがイイ。

 主人公が、ゲリラ兵を撃つのを観るのは辛いですが、この場合は、映画だという安心感がある。

 ゲームで、自分が照準を定めて、自分の意思で引き金を絞るのとはまったく違います。
 たとえ、相手がプログラムが作りだした疑似生命だとしても。

 さて「ブラックホーク・ダウン」はどうだったのか。

 ちょっとがっかりしたことに、思ったほどリアルな映画ではありませんでした。

 もちろん、その国のためだと思って、出かけたその国の国民からゲリラ攻撃を受けるという、米国お定まりの矛盾はイタイものですし、ダークな色調で描かれる戦闘は激しく逼迫(ひっぱく)したものです。

 しかし、耳元を、弾丸がかすめるような緊張感を感じることができなかった。

 臨場感でいえばランク5(わたしの個人的感想です)以下です。

 ランク2の「プライベート・ライアン」の冒頭、ノルマンディ上陸には到底及ばない。

 かの大作「遠すぎた橋」等、失敗に終わったキャンペーン(軍事作戦)を描いた戦争映画は多いのですが、臨場感がそれほどなければ、そういった大作の方が映画としては観やすいような気がします。

 と、そこまで書いたら、戦場臨場感ベスト1映画(あくまで個人的です)を書いておかねばなりませんね。

 わたしにとって、飛んでくる弾丸を、もっとも恐ろしく感じた映画は「トゥモロー・ワールド」でした。

 あの「シン・シティ」のクライヴ・オーエン主演。
 監督はメキシコ出身「ハリーポッターとアズカバンの囚人」を撮ったアルフォンソ・キュアロンです。

 これは、本来、戦争映画ではありません。

 子供が生まれなくなった近未来(2027)を描いたSFです。

 しかし、終盤の戦闘シーンの恐ろしさはDVDを停めたくなるほどでした。

 本当に、銃弾が、こちらに向かって飛んでくる臨場感gがあった。

 いずれにせよ、戦闘を描いた映画の、本来の存在意義は、それを観る人に「戦争の悲劇と悲惨さ」を痛感させることにあると思っているので、その意味では、ブラックホーク・ダウン」も「トゥモロー・ワールド」も、正しい意味での戦争映画であると思います。

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