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2010年2月 3日 (水)

キロキロとヘクトデカけたメートルがデシに追われて デシベル!

 このあいだ、友人と話をしていて、

「牛乳の500mlって使い道ないね。中途半端な量で」
「いや、ネコのいないひとり暮らしでは、500ccは結構良いサイズ」
「うーん。5デシリットルは微妙だな」
「え、いまなんていった?」
「微妙だな」
「じゃなくて、その前」
「うーん」
「それじゃなくて!デシリットルって普通だれも使わないでしょう」
「ああ、そういや使わないなぁ。デシは」
「メートル法で決められた、正式な単位なのにな」
「フランス語がいけなかった」
「んなこといったらメートルもそうでしょう」

 と、ひとしきり、あまり使わねぇ単語話をしたあとで、

「あ、でも、まだデシ使ってる分野がある!」
「えー、そぉかぁ?ドコ?」

「オーディオ関係のデシベル」
「ああ、デシベル!」

 ということに気づきました。

 デシベルって、オーディオや騒音なんかでよく使われる、アレですね。

 でも、なんだかよく分からない単位です。

 そもそも、デシベルは、あのベル研究所の、いや電話の発明者として名高いアレグザンダー・グレアム・ベルが「電話の電気が、電線を伝わる時に『元の電力の何倍(何分の一)になったか』を示すため、例によって自分の名前をつけて生み出した単位である、『ベル』の10倍した単位だったのです。

 やっぱり自分の名前を単位にしてるんだ!

 上でも書いたように、本来、ベルは、時間あたりの音(や電気や電波)のエネルギー量Bと、その基準となる音のエネルギー量Aを比較するための単位です。

 つまり、比べたい数値Bを基本となる数値Aで割って、10を底とする対数(常用対数)をとったのが「ベル」です。

047_2 

 要するに(B/A)の対数値。対数ですから、ベルは本来単位のない単位です。

 ちょっとムツカシクいえば無次元の単位(質量、長さなどの物理量を持たない単位)なので、ヒトによっては単位とみなさない向きもある。

 例えば、身長150センチのヒトを基準としたら、185センチのヒトは(1.23の対数値)ベルということになりますね。

 そして、この数値ベルを少し大きくして、直感的な理解をしやすくするために10倍した数値を、単位ベルに、「10倍してます」という印の、デシというSI接頭辞(国際単位系において規定されている、単位の倍量・分量を10進数で表す接頭辞)をつけて、

『デシベル』というのですね。

 基準のパワー、エネルギーとして何を使うかによって、ベルは変わってきますが、音の場合は「ヒトの耳にギリギリ聞こえる最小の音」音圧で2X10(-5)Pa(パスカル)を用いることが多いようです。

 ここで、ちょっと脱線。

 ここに一枚の紙があります。

 この紙は、三回折ったら1ミリになります。

 では、100回折ったらどれぐらいになるでしょうか?

 ちょっと前まで、この問題に即答できるヒトはほとんどいませんでしたが、最近になって、バラエティー・クイズ番組などで使われて、かなり認知度が上がってきてしまいました。

 答えは、2(97)ミリ(=2の97乗)だから、計算すると170億光年になる。

 これはトテツもない大きさだ。
 よくいわれる宇宙の大きさですら、150億光年といわれているのですから。

 乗数というのは、<指数関数的>に増えていくものなのです。

 これをグラフで表すと、始めはゆっくりと増えているのに、次第に急激に増加する。

045_2

 このように、数の増加の仕方が<指数関数的>なものは、ヒトの感覚から、かけ離れたものになってしまうのです。人間の感覚とは対極の変化をしてしまう。

 このタイプの変化は、はじめのうちは、大したことないな、と思っていても、あっというまに、モノスゴイ数になってしまう

 ある程度までは、ヒトの感覚で理解できるのですが、それを超えると、ドーンと大きくなって、人知の及ばぬトコロとなってしまうのです。

 量の増え方には、もう一つ、線形というものがあります。

 今、1で、一分後には2.二分後には3、というふうに、普通に順番に増えていくものですね。

 グラフにすると直線になる、まあ中学校でよくやってアレです。

 これなら、ヒトの感覚にも近い、徐々に増えていくような感じなんだから分かりやすい……と思ったら大間違い。

 これも、ある程度大きくなると、人間は正しく判断できなくなるのです。

 たとえば、1,2,3……なんて数なら、順番に増えてるって感じがするけれど、10001,10002,10003……まで増えてしまうと、同じように変化していてもわかりにくいでしょう?

 そこでいよいよ「対数曲線」の登場です。

 グラフの形でいえば、↓みたいな感じ。

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 最初は、どんどん大きくなるのに、ある程度までいくとそれ以上は、あまり大きくならないタイプですね。

 実をいうと、人間の感覚は、何でも対数的にしか反応しない特性があるのです。

 光でも音でも、たぶん痛みも快感も、あまり強くなると全部同じにしか感じない。

 だから、対数による量的変化はヒトの感覚に合う。

 というわけで、先のデシベルも、最終的に、対数にするのです。

 すると、騒音などをあらわすのに分かりやすくなる。

 ちなみに、音や光や電波のパワーは、波形の振幅の2乗に比例するので、音のパワー比のかわりに、振幅を使う場合は、対数の値を10倍ではなく20倍します↓。

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 以上、書いてきたように、デシベルは絶対単位?ではないので、基準となる数値によって無数の種類が存在します。
 
 たとえば、技術者は、基準を1[MW]にした[dBm]や基準を1[v]にした[dBV]といった、自己流のデシベルを使いますが、これらは、もちろん国際的に認められた単位(SI単位)ではありませんし、推奨されてもいません。

 よく耳にするわりに、そして、「デシ」がつけられた唯一「有名なモノ」であるにもかかわらず、デシベルはよくわからない単位なのです。

P.S.
 タイトルの文言「キロキロとヘクトデカけたメートルが、デシにおわれてセンチミリミリ」を書くと、なぜだか、中学になりたてのころ、背伸びして読んだ「出家とその弟子(倉田 百三)」を思い出します。

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