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2009年12月25日 (金)

なんだ日本にもあったんだ、誇れるモノ: DAYS JAPAN

 このブログでは、あまり直截(ちょくせつ)的な宣伝行為をしないように心がけているのですが、今回は、あえて、ある雑誌の紹介をさせていただきます。


 ここ数年「ジャーナリズムの危機」が叫ばれ続けていますが、特に、今回の「100年に一度」の(かどうかは知りませんが)未曾有の経済危機と、ネット(特にインターネット)の普及を受けて、出版業界全体が深刻な経済不況に見舞われています。

 ジャーナリズムの持つ良心と矜持(プライド)が危機なのではなく、金銭的な危機ということですね。

 その結果、著名な雑誌や新聞が廃刊、あるいは休刊を余儀なくされていきました。

 20世紀に入って、写実的に風景を切り取ることのできる「写真機」の小型化高性能化を受け、人々を啓蒙し、事柄を直感的に伝えるため、文章より写真をメインに構成した「フォトジャーナリズム」という考え方が発達しました。

 代表的なものは、1936年創刊のLife誌や1888年創刊のナショナル・ジオグラフィック誌でしょうか。

 あのロバート・キャパなどもこういった雑誌から世に出たのですね。

 その後、1970年を境に、テレビの発達(および、その後の素人投稿のネット動画など)によって、これら写真雑誌は徐々に衰退してきました。

 しかし、たまたま現場に居合わせた素人の携帯電話による動画より、真実を伝えたいという使命感(とおそらくは功名心)で、敢えて危険な地域に出向くフォト・ジャーナリストの手による一枚の写真が、多くを語る場合があります。

 残念ながら、ここ数年Lifeをはじめ(2007年に廃刊:その後ネットで細々と存続)こういったフォト・ジャーナリズムの雑誌、とくに良心的な雑誌は次々と姿を消しています。

 だから、報道カメラマンにとって、作品を発表する場がどんどん縮小されているのです。

 話は変わりますが、フリーの報道カメラマン、あるいはどこかの社に所属していながらトビキリの一枚を撮った良識派カメラマンは、その写真をどうすると思いますか?

 本当なら、馴染みのマスコミ、あるいは自分の所属する会社で、その写真を発表したい。

 しかし、それがジャーナリズム的に「重い」写真で、様々な思惑から大手の新聞社などでは掲載が見送られる可能性がある場合……

 そんな時、彼らは(良心的であればあるほど)自らの利益を無視しても信頼できる雑誌にその一枚を送ろうとします。

 その雑誌こそ、今回紹介する「DAYS JAPAN」です。

 おそらく、一般にはほとんど知られてはいないでしょうが、カメラマン広河隆一氏によって五年前に日本で創刊された「DAYS JAPAN」は、世界中の著名なフォトジャーナリストが、口々に「あの雑誌なら信頼して写真を託せる」と名を上げる雑誌です。

 言い換えれば、日本が誇る「最後のジャーナリズムの砦」といっても良い。

 よく、人の命が危険にさらされるのを目撃した時、助けるために駆け寄れば「人間としては合格」だが「ジャーナリストとしては失格」だといわれます。

「ジャーナリストなら、その場面を写真に撮れ」と。

 個人的には「そんなジャーナリズムならいらねぇよ」と思うのですが、一枚の「空腹にうずくまる幼子の横で待つ禿鷲」の写真が、スーダンの深刻な飢饉を救ったことがあるのもまた事実です。

 良い写真には力がある。

 だから、そんな力のある写真をみるために、わたしには、いや、すべての人には良い写真雑誌が、まだ必要だと思うのです。

 それが「DAYS JAPAN」です。

 しかし、その「DAYS JAPAN」も、ご多分にもれず深刻な経営危機に襲われています。

 お分かりでしょうが、ジャーナリズムは、良心的であろうとすればするほど、スポンサーを得ることが難しくなります。

 車の排ガス公害の写真を載せると、大手自動車産業は絶対に金など出してくれません。
 また、真実に迫った厳しい映像、ある意味キツい写真の横に、自社の広告を載せてもらおうという会社もほとんどないのです。

 良質な雑誌を存続させるために、我々にできるのは、雑誌を購入することだけです。

 特に、一年の定期購読が必要です。

 ある番組に出た広河氏が、馴れぬ口調で朴訥(ぼくとつ)と、そう語っておられました。

 綱渡りの会社経営なので、ある程度、資金が底をつけば、年間購読者に返金するための金を残して会社をたたまなければならない。だから、一年間の経営見通しの立てやすい年間購読が良いのだ、と。

 「DAYS JAPAN」を知って、わたしは嬉しくなりました。

 かつて、高度成長期にはエコノミック・アニマルと揶揄(やゆ)され、その後も思想的に世界に誇り、世界をリードするような雑誌媒体を持たなかった日本が、21世紀になって、名だたるカメラマンたちが「あそこならばこの写真を託せる」と思える雑誌を擁するようになったのですから。

 ぜひ、一度「DAYS JAPAN」のサイトをご覧になってください(英語版もあります)。

 今なら「存続キャンペーン」で、12月31日までに年間購読を申込まれたら、年間購読料が1000円引きで、通番入のメンバーズバッヂと広河氏のパレスチナ写真がもらえます。
(本日24日、キャンペーンが2010年3月31日までに延長されたようです)

 上記番組で広河氏が語っておられます。


 サイトにも掲載されている、上記「広河隆一のパレスチナ」の写真は「兵士がこちらに銃口を向けている写真」です。

 注意してご覧になればおわかりと思いますが、紛争地帯の兵士の写真は、どの雑誌や新聞であっても、カメラマンは「必ず」兵士の後ろから、兵士が人々に銃をつきつける後ろ姿を撮っています。銃口の穴が写った写真はない。なぜならそれは危険な状態で、そんな銃前の写真を撮るカメラマンはいないからです。

 ほとんどのカメラマンは、安全な場所、つまり強い側からの写真を撮る。

 正義はひとつではない。十人いれば十の正義、五十カ国あれば五十の正義がある。

 どちらが正しいかは、その者の立つ位置による。

 しかし、「DAYS JAPAN」に載せる写真は、かならず「弱い立場から撮った写真」であるよう心がけています。

 銃を向ける側の後ろからの写真ではなく、銃を向けられる側からの写真を載せるのです。

 サイトに掲載されている「創刊5周年にあたって」から、少し引用します。

 ――雑誌は毎月、印刷代や原稿料、人件費など巨額のお金が出て行きます。今後DAYS JAPANが、存続の危機に陥る可能性は多くあります。これまでの何十倍の努力をしなければ、廃刊に追い込まれるでしょう。それについてはできる限りのことをして、雑誌を存続させるつもりです。私たちにはなじみの薄い言葉である「経営努力」もするつもりです。

 経費削減のためDAYS JAPANは、最小限のスタッフで発行しています。経営努力は、他社に負けないと思っています。それでもこれから、定期購読者の獲得、印刷費節減など、やらなければならないことはいっぱいあります。また出版以外の事業も検討中です。

 しかしDAYS JAPANにとってもっとも大切なことは、この時代の要請にきちんと応えているかどうかということでしょう。それがなければ皆さんに支援をお願いすることもできません。状況の急速な悪化は、誰の目にも明らかですが、どこに行き着こうとしているのか、誰にも分かりません。そして私たちが立ち向かわなければならない障壁は、いまだかつて経験したことがないほど、巨大なものです。この時期だからこそ、DAYS JAPANが果たさなければならない役割があり、それをきちんと果たした上で、ご支援をお願いするべきでしょう。

 DAYS JAPANは、読者に「楽しみ」をもたらす雑誌ではありません。時には見るのもつらい状況を伝える雑誌です。しかし絶対に目をそらしてはいけないことがあり、私たちはそれを伝えることでこの時代と状況を皆さまと共有し、出口をさぐりたいと思います――

 どうでしょう?

 ある雑誌を存続させることで、その国民の「意識の高さ」を世界に示すことができるなら、微力ながら協力したいと、わたしはそう思うのです。
 

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