眠れよゐこよ 〜人生いかに眠りにつくか〜
子供の頃、よく夢を見た。悪夢だった。
うなされて目が覚め、なかなか寝付けないと、祖母がわたしを呼んでこういうのだった。
「どこか遠い深い森を想像して、その上をゆったりと飛んでいくのを思い描きなさい。そうすれば知らぬ間に眠ることができる」
普段、散文的な言動をする祖母が、この時は別人に思えたものだ。
それは、ずっと昔、近くに住んでいた金子みすずにあこがれて都会に出てきたブンガク少女のカケラだったのかもしれない。
あるいは、彼女自身、よくうなされていたので、眠れぬ自分自身をなんとかするために思いついた催眠導入法だったのだろうか。
幸い、オトナになってから(なっているのか?)のわたしは、夢にうなされることはないが、もし寝付けない時があれば、思い浮かべようと思う光景は用意してある。
その前に……
澤木耕太郎氏が、エッセイの中で「人には二種類ある。夢の中で、水中を泳ぐタイプと空を飛び回るタイプだ」と書いている。
そして「おそらくそれは、生まれ変わる以前の自分の生命形態に依るのだろう。鳥か魚かの」と。
彼自身はどちらの夢もみないため、友人から「おまえは猿の生まれ変わりなのだろうよ」と揶揄(やゆ)されているのだ、とサゲを決めているが、実はわたしも、空を飛ぶ夢や海を泳ぐ夢を見たことがない。
そして「おそらくそれは、生まれ変わる以前の自分の生命形態に依るのだろう。鳥か魚かの」と。
彼自身はどちらの夢もみないため、友人から「おまえは猿の生まれ変わりなのだろうよ」と揶揄(やゆ)されているのだ、とサゲを決めているが、実はわたしも、空を飛ぶ夢や海を泳ぐ夢を見たことがない。
わたしにとって(基本的に)海は恐ろしいところだ。
以前に久米島でダイビング体験をしたことがある。
その時、水中で呼吸のできる違和感は慣れると快感に変わることを知った。
以来、ダイビングは好きで、いつでも潜る用意はある。
その時、水中で呼吸のできる違和感は慣れると快感に変わることを知った。
以来、ダイビングは好きで、いつでも潜る用意はある。
およそ、風呂場でホースを使って呼吸をしたことのある者なら(あるよね?)、水圧に逆らって息を吸い込む困難さを知っているだろう。
だが、今や我々は、圧搾空気とレギュレータの組み合わせで簡単に水中呼吸ができるようになった。
クストーとガニアンに感謝しなければならない。彼らが1943年にシステムを開発するまで、我々は、海上から長いホースを通じて空気を送ってもらわなければならなかったのだから。
クストーとガニアンに感謝しなければならない。彼らが1943年にシステムを開発するまで、我々は、海上から長いホースを通じて空気を送ってもらわなければならなかったのだから。
話が横道にそれた。
確かに海中で呼吸ができ、自由に動けることは楽しい。
しかし、水中には、既知の、そして未知の獰猛(どうもう)で巨大な生き物が多数棲息(せいそく)していることを忘れてはならない。
そいつらが、あの仄暗き水中の深淵から襲ってきたらどうするのだ?
ヒトは、水中ではサンマやアジにすら運動能力が劣る。逃げられない。
競泳を見ていつも思うのだが、コンマ01秒を競うため、キテレツなスーツ合戦で体を変形までさせていったい何になるのだろう。
たしかに、ヒトの中では世界で一番泳ぐのが速いのかもしれないが、生き物をベースに絶対値で考えたら、どんな泳法の金メダリストでも、アジにすら勝てないのだ。
(いやいや、もちろん「人類最速」ということには意味がありますよ)
(いやいや、もちろん「人類最速」ということには意味がありますよ)
以前、コンピュータ専用ゲームの「Alice in Nightmare」に熱中したことがある。「悪夢の国のアリス」というタイトル通り、閉じこめられている精神病院から、不気味なチェシャ猫の案内で、鏡を通って悪夢の世界を旅するアリスのアクションゲームなのだが、作り込まれた3DCGがやたらとリアルだった。
その、確か第三ステージが川辺で、うかつに水の中に入ると画面を覆い尽くすほど巨大な川魚にぱっくりと食べられてしまうバッド・エンディングがあった。
最初に、体のほとんどが口のような巨大な魚がイキナリ現れた時は、目もくらむような衝撃を受けたものだった。
ヌエの鳴く夜は恐ろしい……ではなくて、見知らぬ水辺は恐ろしい。
そういったことが、川や海の中では起こりそうな気がするため、わたしは広い海の中を泳ぐ想像ができないのだ。(実際に泳ぎだすと不感症になるのか気にならないのだが)
長らく類人猿の子孫としてやってきた我々の基本フィールドは地上だ。
平原で獣に襲われたらどうにもならないが、立体物のたくさんある都会やジャングルならどうにかなる(かもしれない、という希望がある)
空に関していえば……
煙とナントカ同様、わたしも高いところは好きだが、それはあくまで、しっかりとした土台の上から下を見下ろすのが好きだということだ。
煙とナントカ同様、わたしも高いところは好きだが、それはあくまで、しっかりとした土台の上から下を見下ろすのが好きだということだ。
(あの、クレヨンしんちゃんの作者白井義人氏もそうだったのだろうか?彼のカメラに残された最後の写真が崖の上から見下ろしたアングルで、彼の手にはカメラの取れたストラップが残されていたということ、そして、正に「青空サムライ実写版」の公開中の事故という事実は、他のどんな哲学書より哲学的啓示に満ちているような気がする)
ともかく、地面に足をつけず、つかみ所のない空中をフワフワと浮かぶのは、なんとも頼りなくていけない。
というわけで、わたしが夢の導入で使うなら地上だ(あー長かった)。
青い空、輝く太陽、まばらに少し浮かんだ雲、赤茶けた大地、点在する低木、その中をまっすぐ伸びるハイウェイ。
他に車の影はない。
その道を、単車ならヘルメットのシールドを上げ、車ならオープンカーで頬に風を受けながらすっ飛ばす。
基本的に、エンジン音の方が好きなので、運転しながら音楽は聞かないが、あえて鳴らすBGMなら「イージュー★ライダー」
これならすぐにZZZzzzzz……
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