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2009年10月12日 (月)

日米オトシマエの違い 〜「さまよう刃」・「狼の死刑宣告」〜

 昨日ウチにきた友人が、「さまよう刃」(東野圭吾)の映画試写会に行ってきたというので「寺尾聰もがんばるなぁ」とだけ答えました。

 実は、この映画で知っているのは、寺尾聰が出ていることと、娘(だったよね)を殺された父親が、少年法に守られる犯人に復讐し、その顛末はマスコミを巻き込んで……なんてことだけで、あまりにも現実をナゾリすぎたステロタイプさに、書店で原作を手にとったけれど、読まなかったのです。

 東野圭吾については、初期の作品、乱歩受賞作やピエロモノは、あまり好きではありませんが、デビュー後五年程度経った「宿命」などは好みで、今でも読みかえします。
「鳥人計画」や「パラレルワールド〜」もバカバカしくて好きですね。

 また、いくつかの短編、特に「推理作家の苦悩」など、肩肘はらずに書いたものは出色の出来なのですが、やがて、本人も書いているように「売れなければ担当各位に迷惑がかかる」うえ、白夜行など「何度も直木賞をとりに逃した」ことで、賞取りに走ったような長編作品が多くなったことと、それにつれて、彼個人の「作家的冷酷さ」(彼自身が冷酷なのかはわからない)が鼻につくようになって、最近の作品はナナメ読みするだけになりました。

 あるいは、それこそが、作家が歳をとる、ということなのかもしれません。
 エネルギーが減って地金が出てくる。

 誰かが「さまよう刃」の感想に書いていました。
「最近の彼の作品は、ラストにがっかりすることが多い。平凡すぎて」

 そりゃあ、あれだけ長編を乱発していれば、疲れて、ラストまで体力が持たないよ、というのが、わたしの感想です。

 「チームバチスタ」の作者が「このミステリーがすごい」大賞受賞後、宝島の局長に会った時にいわれた言葉。
「本は売れません。今度の作品(『容疑者Xの献身』)で、おそらく『このミス』一位も直木賞も手にする大作家、あの東野圭吾さんですら『新作を書かないと忘れられてしまう』と年三冊以上出版されています。(以下略)」(「ジェネラル・ルージュの伝説」より)
が、「売れる作家」のすべてを表しているようですね。


 あれ、寺尾聰もがんばるなぁ、のハナシだったのに横道にそれました。

 ふと、BS放送で「雨あがる」の放映をやっていたのを思い出しました。

 彼が、歳をとるにつれ、父親(宇野重吉)に似てくるのは、遺伝子の力を感じて不思議ですね。(わたしは両親にも祖父母にも似ていないので)

 わたしにとっての寺尾聰は、グループサウンズではなく、「奥様は18歳」の「アスカちゃ〜ん」でもなく、もちろん西部警察(だったかな?ほとんど観たことがないので)の刑事でもない、子供のころ、深夜テレビのCF(ポテンザのCF?)で、青白い霧の漂う海外のレース場をゆっくりとレーシングカーがタクシーイングする画にかぶせて流れた「出航(さすらい)」を歌うミュージシャンなのです。

 個人的に好きなのは、「恋のトランスコスモス」か「回転扉」、「まさか・Tokyo」かなぁ。

 大ヒットした演歌「ルビー〜」は、好きではないので、流れるたびに聞こえないふりをしていましたが……


 いやいや、ここで書きたかったのは、日本では、自分の子供を殺されたオトコが復讐しても、マスコミを巻き込んだ社会現象になってしまうのだなぁということです。

 それが地位を得て、社会派に梶を切った作家が向かう正しい道だとは思います。

 しかし、海の向こうで、子供が無惨に殺されたら……戦争が起きるんだぜ!


 というのが、今回、テーマにしたかった「狼の死刑宣告」(2007年作:2009.10公開)なのです。




 主演は、あの、悪党ヅラのケビン・ベーコン。

 実は、わたしは彼が大好きなんですね。
 一時期、人気が落ち込んだものの、最近、悪役で復活を果たしたことは嬉しい限りです。

でも、わたしが本当に好きなのは、彼の初期作「クイックシルバー」(1985)です。
「フットルース」「ハリウッドをぶっとばせ」(だったかなウロ覚え)と、だんだん落ち目になってきた彼が、起死回生を目指して打った次の一手です(たぶん)。


 若き、株の天才仕手師ケビン・ベーコンが、しくじって一夜にして無一文になり、失意の中、喰わんがためにニューヨークを時速70キロで失踪するバイク(自転車)メッセンジャーとなるストーリー。

 作中、彼のライバルとして登場する、やせぎすで長身の麻薬搬送人を、若き日のローレンス・フィッシュバーン(あのマトリクスの)が好演しています。
 ローリー・フィッシュバーンとクレジットされているので、はじめ誰だか分かりませんでした。「地獄の黙示録」に17歳で大抜擢されてから数年後の彼です。

 これは、後の、ホイチョイ・プロダクションによる「メッセンジャー」の原型ともいえる作品ですね。

 しかし、世間的な人気は、ほとんど無かったようで、DVD化もされておらず、今、「クイックシルバー」で検索すると、みなさんご存じのファッションの方しか表示されません……と思ったら、2009年12月2日にDVDが発売されるじゃないですか!しかも二カ国語ツキ!予約よやく……

 いやいや、興奮してしまいました。

 そのケビンが、徐々にウイレム・デフォー似の悪人ヅラになって、ついにブチ切れたのが、この「狼の死刑宣告」なんですね。

 息子(日本の場合、娘が犠牲者であることが多いのは、オトコとしての父親の目から見て、娘が陵辱された上で殺された方がインパクトが強いという作り手の判断が働いているからでしょう。海外では圧倒的に息子が殺されますね)を、目の前で殺された中年オトコが、チョイ復讐しかかって逆にギャングどもにボコボコにされてブチ切れ、徐々に普通人として壊れていき……

 やがて、武器を集め、スキンヘッドになって……って、まるで「タクシードライバー」じゃないの!

 そう、これはある意味「タクシードライバー」なんですね。

 ただ、ロバート・デニーロ演じるトラヴィスはベトナム戦争が壊れるきっかけでしたが、ケビンは息子の死と納得できない犯人の刑罰で人格崩壊を起こし、プライベート戦争を開始するのです。

 マスコミはほとんど表面に出てきません。

 そういったフル・バイオレンスの映像を、SAW(一作目)のジェームズ・ワン監督が、色調を抑えた画で、粛々と描いていきます。

 そう考えると、ケビンはジグソウでもあるわけでしょうか。

 全国一斉公開の映画ではありませんが、バイオレンス描写に耐性のある方なら「さまよう刃」の口なおしにこちらもオススメします。

 なんせ、戦争ですから。

p.s.
 戦争で思い出しましたが、押井カントクが、黒木メイサ、菊地凛子、佐伯日菜子の3人を使って、八年ぶりに実写映画を作りますね。12月19日公開だそうな。
 タイトルは「アサルトガールズ」




http://www.cinemacafe.net/news/cgi/release/2009/10/6819/
 日本語で「突撃少女」の方が面白いような気がしますが、まあ、前作のバーチャル空間のネゴト実写映画「アヴァロン」の二の舞にならないようにお祈りします。

 未来世界のバーチャル砂漠(これも仮想だった!)で、突然変異の超大物<マダラスナクジラ>を仕留めるための戦いを繰り広げるガールズ、という設定はかなり魅力的なので、頑張って欲しいと思います。

 海外からの「SFであっても、利口で可愛いクジラを退治するなんて許せない」という内政干渉的言動が心配されますからね。

 あるいは、そういった「世論カキ回し」も押井監督の狙いなのかもしれません。

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