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2009年10月27日 (火)

覆面討論会 〜読書好き中高生7割超〜

 ざわざわ

A:「えーお静かに願います」

 ざわ、ざわざわ

A:「お静かに」

 ざわ、ざわざわざわざわざわざわ

A:「いい加減にしろって、ったく、コミック版カイジの背景文字かよ!」

「……………………………………」

A:「コホ、エー、本日はよくお越しいただきました。とくに茶菓もお出しできませんが、せめて、日頃、皆さんが腹にためておられることを腹蔵無くこの場で吐露していただきたいと思います」

E:「テーマは?」

A:「テーマは特に決めてありません。では、以後はご自由に発言なさってください」


B:「あのね、さっき届いた今日の新聞に載ってるんだけど、読書好きの中高生が7割超えたんだって」

C:「ホントなの?嘘でしょう。活字離れが叫ばれて久しいのに」

B:「いや、それが本当らしいんだよ。アンケートで、小学校で8割、中高生でも7割を越す子供たちが読書が好きだと答えてるらしい」

D:「どこが調べてるんだ?また『為にする』記事じゃないのか。ナントカ機構の」

B:「エーと、全国図書協議会の協力で毎日新聞が調べた、とあるね……」

D:「ハハ、協議会ね。いわんこっちゃない。天下りの臭いがプンプンするなそりゃ」

B:「そうかなあ、違うと思うけどねぇ」

D:「自分で言っといてなんだけど、天下りって言葉自体腹が立つね。中央官庁は高天原か?ヴァルハラか?」

B:「死んでないって」

C:「でも、なんで今、読書好きが増えてるの。一億総マンガ世代でしょう。経済学だって日本の歴史だって、マンガで勉強する時代なのに」

B:「『日本経済入門』はマンガじゃなくて石ノ森先生提唱の『萬画』だけどね。機構では、読書をする時間を設ける学校が増えたのと、ハリー・ポッターシリーズのようなシリーズ物が人気を博して、長期にわたって読書をする子供が増えたから、と分析しているね」

D:「なんだか手緩い分析だな、それは。まあ、ゆとり世代の良い面が出たということか」

B:「ケータイ小説」のヒットで新しい読者層が生まれた、ということもあるらしい。

D:「あれって読書か?携帯電話で直接読んだことはないが、本になったのを読むと、行間が空きすぎて文字もスカスカで、何がなんだか分からなかった」

C:「まあまあ、あなたは若者文化がお嫌いだからそう言うけど、僕はあれは新しい小説の形だと思うな」

D:「若者に文化なんかない」

E:「いやあれは文化さ。文化包丁、文化住宅、文化鍋……ブンカと名の付くものに、真のCultureがあった試しはない。つまり若者ブンカ」

B:「またぁ、突然発言したと思ったら、そんなドキっとするようなこといって。まあ、ライトノベルなども一役かってるんだろうけどね」

C:「わたしは、なんだか嬉しいな。だって、もう文字で表現する媒体は廃れる一方で、小説なんて消え去ってしまうと思っていたから」

B:「自分は、案外、文字メディアは残ると思っていたよ。だって、メールでもブログでも、ツイッターでも、最後はやはり文字ベースでの発言になるからね」

D:「専ら、写真や画をアップするブログやツイッターもあるらしい。見たことはないが」

B:「でも、誰もが他人に見せられるような画を描いたり、写真をとることはできないでしょう」

E:「他人のものを盗んで再構築し、あたかも自分の意見のように発言できるのが、文章の優れた点だ。だから、その本質において文章による作品は廃れないようになっている」

B:「その通り。美しい画や写真、漫画を見ても、それを自分のものとして人に受け売りすることは難しいからね。誰もが画がうまいわけじゃない。コンピュータを使えばコピペができるけど、面と向かって話をする時は、やっぱり言葉です」

D:「ちょっと待て!」

B:「は?」

D:「コピペてなんだ」

B:「コピー アンド ペースト、まあ切り貼りのことですね」

D:「んなこたぁ分かってる。妙な省略形を使うな。気持ち悪い」

E:「安易な外国語および省略形の多用は人をバカに見せる。的確な日本語を知らないが故に不明瞭で多義の外国語に頼るからだ。省略形は、閉じられたグループや社会では符丁として有効だが、取り立てて親しくない者にいきなり使うのは礼を失する。つまりバカだ」

B:「うーなんと言い返そう」

C:「まあまあ。確かに、聞いて、見て、すぐにそれを他所で使えるのが、話し言葉と文字の良いところだね。わたしなども、若い頃は、誰かの良い表現を耳にすると記憶して次に別の場所で使おうなんて思ったもんですよ。子供たちも、それに気づいたかのかも」

D:「あるいは、単純に読書が楽しいのか」

E:「ネガティブ。プロットの創作、ストーリー・テリングの妙味という意味において、小説は、今のコミックには勝てない。新しい才能のほとんどは、コミックに集中しているからだ。媒体の表現差を無視すれば、小説のベストセラーの面白さを10として、コミックのベストセラーは100だ。発行部数は小説1に対してコミックは100万だ。売れ、儲かる分野に才能は集まる。かつての小説がそうであったように。極言すれば、現代は、才能のない落ちこぼれが仕方なく小説家になる時代だ」

D:「相変わらず冷徹な考えだな。だいたいは当たっているだろうが、表だっては言わない方がいい」

B:「記事によると、1ヶ月に読む本の平均冊数は、中学生3.7冊、高校生1.7冊と増えつつあるらしい」

C:「これは、どう見たらいい?中学の頃は読書をするけど、年をとるに従って本を読まなくなるということ?だから、大人は半白の中年までが帰りの電車でマンガを広げて読むのかな」

B:「あるいは、最近の学校の努力によって、若い世代から活字に戻っていっている、ということかもしれない」

D:「だとすると、20代〜50代だけが、本を読まずマンガのみを読む、知性の薄い世代として、両側から挟まれることになる」

E:「智のロストジェネレーション」

C:「またまたぁ。でも、月4冊とか月2冊って、まだそんなものなの?」

B:「そりゃ、あなたたちは、一日に3〜4冊読むから少ないように思うだろうけど」

C:「フォトリーディングすれば簡単……なわけないよね」

D:「ああいった速読幻想にとりつかれると、読書ができなくなる」

B:「フォトリーディングって、あれは資料読みの方法でしょう?」

D:「もしくは、成功するためのハウトゥ本を読むための読書法。必要なところだけ切り取り読みするための」

E:「『成功のための啓蒙本』=『その本を書いた人を儲けさせて成功者にする本、そして買った本人は、さらに貧乏になる本』」

C:「また、だめだって」

D:「某経済評論家の彼女については、一度、議題に載せたい」

B:「ああ、あの目がいつも笑っていない女性ね。それで思い出したけど、この間、夜中にふとテレビをつけたら『朝までナントカ』をやっていて、そこに、若者代表とかいう自称作家が出ていたんだけど、その無意味な外来語多用の言葉と早口が、彼女にそっくり過ぎて面白かった」

C:「あの番組は、月に一度、録画して観るようにしてるんだけど、確かにそんな人出てたね。あれって、明らかに、人と人とのコミュニケーション上のプロトコルを無視してる」

D:「おそらく、速読法で、1冊の本として書かれた書物を部分読みし、情報を高速で切り貼り取得し続けたおかげで、いま『自分が他者と話をしているのだ』という事実を忘れて会話しているのだろう」

B:「ああ、そうか、他者とのコミュニケーションは、お互いの話す速度、思考速度を合わせてこそ円滑に行える、ということだね。通信におけるネゴシエイションだ。それができず、一方的に自分の情報を、自分だけが分かる言葉で吐き出そうとするから、ひとつ一つの言葉が軽く、入れた言葉をそのまま出している『言葉の下痢症状』みたいな印象を与える」

E:「つまり、自分しか見ていないということだ」

C:「そんなことないでしょう」

E:「いや、ある。立て板に水が如く言葉を発している時の彼らの目をよく見るがいい。その目には、正に今発言をしている自分しか映っていないはずだ」

D:あるいは、発言の自信のなさを、単語量による恫喝つまり相手に虚仮威しをかけて、威嚇して誤魔化そうとしている、か。有り体に言えばハッタリだな。

B:ああ、それあるかも。だって、彼らの発言を聞いていると読経しているみたいだもの。かんじーざいぼー」

E:「それはブッダ(釈迦)とシャーリプトラ(舎利子)の会話記録」

B:「でも、さっきのハッタリっていうのは、なんとなく納得できるね。またそうで無くても、彼らの焦った話し方には自信が感じられない」

E:「語彙数だけが先走りする発言。男としての自信のなさを、落とした女の数で誤魔化そうとしているドンファン気取りのマザコン男と同じだ」

B:「真の愛に辿りつくためには、独りの女性との深い絆だけで充分ということだな」

C:「それって発言のほうじゃなくて読書の例えだよね。真顔でよくいうよ。つまり多読濫読信仰には疑いを挟めってことだ。一冊精読は決して悪いことじゃない」

E:「巧言令色少仁。誠意が無く頭が悪いと多弁になる」

C:「またぁ。ダメダって」

B:「どうせ、誰のことかなんて分からないって」

C:「分かりますよ。絶対」


A:「はい、今日はありがとうございました」

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