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2009年2月 7日 (土)

クオド・エラト・デモンストランダム かく証明せり

 今回はテレビドラマの話です。


 いま、わたしには毎週楽しみにしている番組があります。

 その名は「Q.E.D.」です。

 意味は、ラテン語の、Quad Erat Demonstrandum(かく証明せり)の略語ですが、そのコトバをタイトルにもつコミックを原作とするドラマです。





 例によって、とりあえず数話分、録画だけしておいて、先日、きちんと録画できているか確認するためにざっと流し観してみたところ……

 これが結構いいんですねえ。恥ずかしながら、すっかりファンになってしまいました。

 こういったドラマの好悪は主観によるところが大きいので、自分が気に入ったからといって、あまりヒトサマには勧められないとは思いますが、ホント、なかなか面白いですよ、コレ。

 実をいうと、以前、コミック喫茶でざっと原作に目を通してみたのですが、その時は、特に印象を受けませんでした。

 名探偵コナン、金田一少年、探偵学園Qなどと同列の「勢いにのって作っちゃいましたタイプの少年探偵」という感じの作品に過ぎないように思えたのです。


 主人公、燈馬 想(とうまそう)も、飛び級MIT卒天才児、といういかにもなステロタイプな設定で、魅力を感じませんでした。

 その実写ドラマ化、しかもNHK!

 朝の連続テレビ小説の体たらく、および金曜時代劇における駄作の連発、そして土曜日の「緒方洪庵なんたら」の壊滅ぶり……最近のNHKドラマはとんでもないことになっていますから(アツヒメだけは人気はありましたね。一回も観ませんでしたが)、Q.E.D.にも、まったく期待はしていませんでした。

 実際、第1話「青の密室」は駄作でした。
 スカイダイビング中の殺人をあつかったものですが、謎も謎解きもつまらない。

 しかし、第2話「銀の瞳」で、少し趣が変わります。
 謎と謎解きは相変わらず面白くないのですが、人間の描き方が良くなって来たのです。
 たとえば……

 活発で「おきゃん」な設定のヒロイン水原可奈が、人形作家の母によって大切に守られる女性をみて「わたしもあんなふうに守られたい」とつぶやきます。
 母のいない彼女は、父の警察官(警部)水原幸太郎によって、幼い頃から剣道を叩き込まれていてスポーツ万能なのです。
 番組のラストで、謎解きをし、Q.E.D.宣言をした燈馬がヒロインにつぶやきます。
「お父さんが君を鍛えたのも、きっと同じなんじゃないかな。君を守るためなんだよ」

 そして、彼女は父親の愛情に気づく。

 つまり、原作はともかく、演出と脚本の力のおかげで、Q.E.D.はさわやかな青春ドラマになっている。
 これがいい。

 あたかも、「宇宙の戦士」映画化としては失敗作だった「スターシップトゥルーパーズ」が、若者の青春友情物語として、長く語り継がれるようになったように……

 この作品を低く扱う人たちは、謎解き演出の下手さをけなしていますが、このドラマの眼目はそこではありません。

 演出には、確かな力を(ミステリ方面への力でないのが欠点ですが)感じます。

 特に第3話の「学園祭狂騒曲」では、ほんとうに学芸会レベルに話が落ちてしまいそうになるのを、その一歩手前で踏みとどまって、天かける孤高の天才:燈馬 想の気持ちが徐々に地上の一般人に寄り添っていく姿を描くことに成功しました。

 そう、Q.E.D.は、金*一少年に代表される凡百な謎解きドラマではなく、純粋に「アメリカで傷つき、日本に舞い戻った天才少年の人間再生ドラマ」として異彩を放っているのです。

 可奈を演じる高橋愛もなかなかいい(今まで見たこともなかった)。
 口元が在りし日?のマコーレ・カルキンに似てるし。
 声のよく通る、元気の良い原田知世といった感じで好感がもてる。

 ああ、それで気づいた。NHK版Q.E.D.は、実写版「時をかける少女」に感じが似ているのだな(大林版、NHK少年ドラマシリーズ版のどちらにも)。

 大人びて、人生を達観した感のある少年とまっすぐな少女の恋

 その意味で、原作と違ってヒーローとヒロインの身長が逆転しているのが良かった。

 原作では、燈馬の方が可奈より小柄なのだが、ドラマでは、演じる役者の体格ために、燈馬が可奈より随分背が高いのだ。まるで、ケン・ソゴルと芳山和子のように。

 実年齢において、少年の方が少女よりかなり年下である点も(高橋愛は「モー娘。」で最年長の22歳。対する中村蒼は17歳)時をかける少女に似ています。

 欠点は可奈を演じる高橋愛が華奢すぎて、どうみても強く見えないということですが、この際、そんな些末なことには目をつぶりましょう。


 第4話「ブレイクスルー」では、ついに、なぜ燈馬がMITから日本に帰って来たかが明らかになる。

 この回も、凡庸な謎解きはともかく、選ばれた天才のみが感じる孤独と、彼らが持つ「自分を理解できる能力を持つ者」の渇望(かつぼう)がうまく描かれていた。

 日本の主要キャラ以上に日本語が流暢(りゅうちょう)過ぎるガイジンがゲスト出演というアンバランスさも面白かったし……

 ここで燈馬は、自分をMITに連れ戻しに来た、同じ天才のシド・グリーン(ロキ)へきっぱりと宣言するのだ。
「自分は、(才能にあかせて早くから論理の世界で暮らしていたが)今は、日本の『もしかしたら楽しいかもしれない』世界で生きていきたいのだ」と。

 つまり燈馬は、置き忘れてきた青春を取り戻そうとしているのだ。

 まっすぐで元気な可奈を水先案内人として。

 第5話「サスペンス刑事/狙われた美人女優/迫りくるストーカー/断崖にこだまする銃声/可奈と想は全部見ていた」という長いタイトルは、現在放映された中での最高傑作となった。
 これは、おそらく原作なしのオリジナルストーリーだと思うが、サスペンスヲタクの刑事のスラップスティック(ドタバタ)を描いた秀作だ。

 次回、第6話はタイムスリップをからめた「賢者の遺産」で、あの役者バカ、藤岡弘も出演するので今から期待しています。

 観たことが無い方は、ぜひ一度ごらんになってください。

 ああそうだ、Q.E.D.の笑いドコロをもうひとつ。
 可奈の父親、水原幸太郎を演じる石黒賢が、今まで聞いたことのないドスの効いた(というか、変に声をつぶした)、妙な声で話すのを、おかしいおかしいと思っていたら、その理由に、さっき気がつきました。
 名探偵コナンで、眠りの小五郎を演じる神谷明が、フケた声を出すためにやっていた、妙なふうに声をつぶす話し方を石黒賢が真似ているのです。

 これも、ぜひ聞いてみてください。下手な物まねみたいで笑えますから。


 あと、エンディングの、青山テルマの歌をバックに流れる映像は「切り絵的ストップモーション」による大林宣彦ばりの表現手法をとっています。

 以上より、制作者側が「Q.E.D.」を「時をかける少女」に見立てて作っているのは明らか。

 Q.E.D. 証明終了です。


 私のおすすめ:
Q.E.D.証明終了   1 /加藤 元浩 著 [本]

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