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2008年12月 9日 (火)

埋め込み型疲労マーカー HHV-6

 みなさんは、疲れるとどうなりますか?
 ある人は目の下に隈ができたり、また別な人は口内炎ができたりするでしょう。

 このように、疲れは目に見えることがある。

 しかし、人によっては、疲れが表に出てこないこともあるし、自覚すらしていないこともあって、結果的に、そのために過労死してしまうこともあります。

 発熱なら体温計で、血圧だったら血圧計で、血糖値やコレステロールなどは血液組成を調べて、だいたい分かりますが、疲労となると具体的な数値で表すことができませんでした。

 今、その研究が端緒(たんしょ)につき、やがては花開こうとしている、という話を、今回してみようとおもっています。

 その原動力というかマーカー、つまりキーとなるのがウイルスです。

 ウイルスの名は、HHV−6(ヒトヘルペス6)。
 突発性発疹、いわゆるチエ熱の原因と呼ばれているものです。

 チエ熱は、およそ日本人のほとんどが幼少時にかかる病なので、ほぼ日本人のすべてが、そのウイルスを体に取り込んでいることになります。
 HHV−6は、他のウイルス同様、ひと通り症状が落ち着いても、消滅はせずに人間の脳内に潜伏します。

 脳内に寄生して生き続けるんですね。寄生生物の願いはただひとつ、宿主(しゅくしゅ)の長生きです。
 その意味で、宿主を殺す、致死性ウイルスというのは充分に異常なのですが、まあその話は、また別項で。

 発生過程はよくわかっていないそうですが、人は疲れてくると「疲労伝達物質」を作り出します。
 疲労伝達物質は体内を巡り、体を休ませるために細胞の活動を停止させていきます。
 このあたりでヒトは「疲れ」を感じるようです。

 しかし、ヒトは体の警告を無視して、脳の判断だけで無理をしがちです。つまり、さらに働く。

 すると、細胞が停止を通り越して死んでしまう。もちろん細胞は再生されますが、それを上回るイキオイで細胞が死ぬと……一番影響を受ける心臓が止まってしまうのですね。

 過労死のほとんどが心臓発作によるもの(まあ、ヒトが死ぬというのは、つまりは心臓が止まるということだといえばそれまでですが)という理由は、そういうことです。

 さて、そこで件(くだん)のHHV−6です。
 脳内でおとなしくしているHHV−6は、疲労伝達物質が増えるにしたがって身の危険を感じます。
 宿主の死は自分の死でもあるわけですから。
 そこで、彼?は休眠状態から醒め、再活性化して、宿主からの脱出をはかります。
 血液を通じ、唾液にとけて体外にでようとするのですね。

 だから、疲労度を測りたければ、唾液中に含まれるHHV−6の濃度を調べてやれば良い、ということになります。

 この「疲労の研究」の第一人者というのが、東京慈恵会医科大学 ウイルス学講座 近藤一博教授という方です。

 第一人者、といいますが、こういった「疲労の研究」は、日本以外では、ほとんど行われていないそうです。

 だって、KAROSHIが、FUJIYAMA、YAKUZA同様、国際語として世界で認知されているくらいだから。

 つまり「ガイジンは疲れない」というのはウソですが、「休むのがウマイ」というか、要は「疲れるほどは仕事をしない」のでしょう。

 昨日、BSのフランスニュースを観ていたら、フランスの労働者が「日曜日にスーパーで働くのを強要されるのは権利侵害だ。働かせるなら給料を倍にしろ」と叫んでいましたからね。

 個人的には、アメリカなどでも、働く人間は死ぬまで働いているとは思うのですが、あの国は、もともと心臓病の多い国だから、「過労による心停止」が目立たないだけなんじゃないかな。

 それはさておき、「ウイルス学」の教授が、ウイルス撲滅を目指さず、ウイルスをマーカーにして、疲労度の測定をしようとしている、というのが面白いとは思いませんか?

 思えば、ヒトは、生まれてから、さまざまなウイルス性疾患にかかります。

 それらはほとんど死滅せず、体内に潜伏する。

 脊髄(神経節)に潜伏した水痘ウイルスが、体力が落ちると表に現れ、たいへんな激痛を引き起こす「帯状疱疹」などは、その代表例ですね。

 ウイルスは生き物ですから、さきのHHV−6のように、体の異変に敏感に反応するものもいるはずです。
 たとえば、ガン細胞(初期ガンの小さいヤツ)ができたら、活性化するような。
 これをうまく使えば、予防医療の革命が起こるかもしれませんね。

 これまで、「ヒトはヒトとして単体で生きる」というのが、生物としてのヒト認識でしたが、今後は、「ヒトは、さまざまなウイルスとの共生状態で一生を送る」、というように意識を変えなければならないかもしれません。

 そう考えたら、なんか、ちょっとだけ孤独感が薄れる……

 なんてこともないでしょうが。



 あと、牛などのように、生まれながら、四つあるうちの瘤胃(りゅうい)内に、草の主成分であるセルロース分解の酵素を持っている生き物もいますね。

 だから牛は、草を消化できる。

 しかし、だからこそ、幼牛の時に、母乳(まさしく我々が飲む牛乳です)を瘤胃にいれるわけにはいかない。タンパク質によって酵素がダメージをうけるからです。

 そこで、幼牛には、口から四番目の胃(皺胃しゅうい)に直接ミルクを流し込む「ミルクバイパス」が備わっているのですね。


 蛇足ですが、「ヒトがヒトにキスをする」(のを好む?)理由のひとつが、ウイルスの経口感染を本能的に望んでいるからだ、という説を以前に目にしたことがあります。
 ヒトの進化にウイルスが関わっているというのも定説になってきていますね。


 余談が長くなってしまいましたが、ともかく、我々人類は、「虎よ虎よ!!」のガリィ・フォイルのように、宇宙空間にひとり残されたとしても、We are not alone.であるのは確かなようです。

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