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2008年11月10日 (月)

奇人・変人・天才ニコラ・テスラの夢 マジシャン映画〜プレステージ〜

 その男の名を、初めて知ったのは高校の授業だった。
 それは、ほんのサワリだけだった。
 頻繁に、その名に接するようになったのは大学に入ってからだ。
 
 電子工学を学ぶ上で、磁界、およびそれを束ねた磁束密度は避けて通れないのだが、その単位をテスラ(記号: T)というのだ。

 ご存じのように、学術単位のほぼすべては人名である。

 誤解を恐れず極論すれば、動植物学者の究極の夢新種己(おの)が名を冠することであり、天文学者の究極の夢はに、物理学者の究極の夢は単位オノレの名をつけることだ。

 それに比べれば、ノーベル賞など軽い軽い……のかも。

 ガウス(磁力単位)ニュートン(力の単位)ジュール(熱エネルギーあるいは仕事の単位)パスカル(圧力)も人名だ。

 あ、プランク定数とかファンデルワールス力とかもあるが、やはり単位は使われる頻度が違うからねぇ。やっぱ単位ですよ。

 では、テスラとは何者か?


 1856年7月9日、ハンガリー王国(現在のクロアチア西部)に生まれる。
 電気技師・発明家。交流電流、ラジオや無線トランスミッター、蛍光灯、テスラコイルなどの多数の発明をする。
 8か国語に堪能で、詩作、音楽、哲学にも精通。

 近年、研究というか、禁忌(タブー)感が薄れたための封印解除といったものが進み、様々な研究書や論文が発表されているが、わたしが、初めて、単位以外のテスラ、人としてのテスラを知ったのは荒木飛呂彦監修のコミックだった。

 たしか1989年のことだ。

 調べてみると、当時、荒木氏が忙しかったためアシスタントが作画をしている。

 その中で、テスラは、尖ったものを好み、丸いモノ、特にタマゴを見ると吐き気をもよおす一種病的な男として描かれていた。(詳細は「変人偏屈列伝」にて)

 まあ、すごくコテコテにいってしまえば、天才にありがちな変人だったわけだ。

 直流を推(お)した発明王エジソンに対して、テスラは交流の利点を強調した。
 実際には直流より交流のほうがはるかに使いやすい。
 トランスを使って電圧を容易に変えることができる上に、減衰、つまり弱めずに遠くに送電しやすいからだ。
 だから、今、公共サービスとして直流を使っている国はない(はず)。

 だが、結果的に、商業的才能というか社会的常識に勝っていたエジソンがテスラを圧倒し、世の電気は一時的に直流主体となってしまった。

 直流は安全だが、交流は危険だという、よくわからない理由も捏造(ねつぞう)されたようだ。

 発明王だったエジソンは、さすが王らしくかなり暴君的なこともやったのだ。


 さて、今回ご紹介する映画「プレステージ」にもテスラが登場する。




 公開当時には、荒木飛呂彦氏のイラスト入りステッカー5万枚がプレゼントされた。やっぱり、今のところ、テスラといえば有名なのは荒木氏なのだなぁ。






 この映画は2007年公開で、長らく観たいと思っていたが、果たせずにいた。

 このたび、近くのレンタル店が「旧作を安くレンタルするキャンペーン」をはってくれたので、まとめて借りることができたのだ。

 おかげで、(新)犬神家の一族、獄門島、マインドゲーム、ベクシルなど、書きたい作品が目白押しになってしまったが……


 それはともかく、プレステージ。

 時代背景は19世紀末。

 「Xメン」のヒュー・ジャックマンと、「バットマン・ビギンズ」および「ダークナイト」のクリスチャン・ベイルという、ふたりのマジシャントリックのさや当て(へんな言い方だが、これがなんかぴったりくるんだな)をテーマにした映画だ。

 そんなジャンルがあるかどうかは知らないが、いわばマジシャン映画

 ちなみに、ベイルは、あのスピルバーグの「太陽の帝国」で、ETのかわりに零戦と指タッチしていた子役です(観た人ならわかりますね)。




 産業革命下の19世紀末ロンドンは、同時に科学時代の幕開けでもあり、人々の「見たことがないものを見たい」という欲望が、かつてないほど高まった時代だった。

 ううむ。このあたり、もと日本シャーロックホームズ協会会員の血が騒いでテンションがあがってしまう。

 映画自体は、バットマン・ビギンズで新執事になったマイケル・ケイン演じるトリック・ギミック開発者狂言回しに語られていく。

 若き日、共にマジックの腕を競ったジャックマンとベイル、だが、ある日の事故を機にふたりは憎み合うようになる。

 その後、袂(たもと)をわかったふたりは、それぞれが成功しそうな舞台には、お互いが、かならず変装して現れ、トリックをあばき、邪魔をし、あまつさえ傷つけあった。

 当時のマジシャンの夢であった、瞬間移動マジックを実現したベイルに嫉妬し、それを盗もうとするジャックマン。

 ストーリィは、めまぐるしく時間を前後しながらも、わかりやすい形で進んでいく。このあたり演出と監督がうまい。

 やがて、ベイルの罠にかかって、ジャックマンは、はるばるアメリカまで、ニコラ・テスラに会いにでかける。

 ほら、テスラが出てきたでしょう?
 映画では、デヴィッド・ボウイが、それだと言われないと、わからないような容姿でテスラを熱演しています。実際にホンモノ(写真)にかなり似ている!。

 ベイルは、テスラの、いわゆるテスラ・コイル(下写真)をつかって放電し、それを演出に使っていただけだったのだ……が、


 ベイルのしかけた奸計(かんけい)は、結果的に、ジャックマンに、驚くべき科学の力を与えることになる。

 いや正確にいえば恐ろしい力だ。

 ロンドンに帰ったジャックマンは、とうてい考えられない瞬間移動マジックをおこない始めた。

 100回限定と回数を区切って。


 その、あまりにスゴイ瞬間移動をねたんだベイルは、密かに舞台裏に降りていくが、そこで見たのは、水槽に落ちて溺死するジャックマンの姿だった。

 殺人犯として告発され、絞首刑を宣告されるベイル。

 だが、そういった表に現れた事象は真実とはまるで違うものだった。

 あまりにもスゴイ、マジシャンの業(ごう)。罪深さ。

 ベイルもジャックマンもだ。

 二人とも、瞬間移動トリックのために、常人では考えられないほどの犠牲を払っていたのだった。

 映画の最初からそうだ。
 観終わって、ぜひ、もう一度、最初に戻って少しだけ観なおしてほしい。
 そうすれば、わたしのいっている意味がおわかりになると思う。



 ネタばれになりすぎるので、「プレステージ」のはなしは、これくらいにして、テスラについてちょっとだけ書くと、映画でも少し触れられているテスラの実験は、20世紀に入って、さらにSF的に奇抜なものになっていったらしい。

 それらは、単語だけ並べてみても「世界システム」「オートマン」「スカラー兵器」など、聞くだけで想像力をインスパイアされるものが多い、が……

 これらのブツも、もし様々な業績抜きで、能書きだけを見れば、まるでドクター中松的発想のものが多いのだった。(もちろん、ゼンゼン違いますよ。本気にしないで)



 時は下って、1943年、マンハッタン・ニューヨーカー・ホテルで、看取る者もないままテスラが死ぬと、FBIが突然あらわれ、すべての資料を持ち帰ったそうだ。

 このあたり、戦後、アメリカが、石井四郎たちへの裁判免除と引き替えに731部隊の資料を密かに持ち帰ったことに似ているな。時代的にも近いしね。


 ニコラ・テスラに関しては、今後、彼をモチーフにした小説も映画などが数多く出てくるだろう。


 言い古されているが、「神か、悪魔か」「天才か詐欺師か」

 「ホンモノか、ニセモノか」

 テスラの評価は、まだ定まってはいない


 私のおすすめ:
変人偏屈列伝 (愛蔵版コミックス)

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