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2008年11月26日 (水)

VとOK

 景山民夫は、その江戸っ子らしい豪放な文章とテレビ出演等でのおとなしい姿のギャップが好きだった作家だが、その彼が、生前、「食わせろ!!」というエッセイ集を書いている。





 これは、毎日、エッセイに山藤章二のイラストをつけて夕刊フジに連載するという「エッセイマラソン」とでもいうべき企画で、年代わりに井上ひさしや林真理子などの筆達者が俎上(そじょう)に上がっている。

 ご存じのように、作家が山藤章二と仕事をするのはオソロシイ。

 なぜなら、文字でいくら気の利いた話をデッチあげても、その横に描かれた(そして書かれた:山藤氏のイラストは文字とのハイブリッドなのだ)毒のあるそして含蓄(がんちく)と蘊蓄(うんちく)に富んだイラスト一枚で、自分のハンパな文章など吹っ飛ばされてしまうことがママあるからだ。

 若き日の林真理子などは、随分それで泣かされた、と後書きにかいている。

 誤解のないように書いておくと、別に山藤氏が面と向かっていじめるんじゃないよ。
 それどころか、連載始めに顔合わせをしたら、あとはほとんど会わないまま一年が終わることも多いようだ。

 そんなことではなくて、作家の側からみたら、毎日必死で文書をヤッツけても、それを上回るセンスのイラストを書かれたら、とても怖くて次の日の文章を書けない、ということです。

 だが、景山民夫ほどのシャレ者になると、かえって山藤氏をからかったり、イラストレーターへの挑戦といってよい文章を書いて挑発している。さすがだ。

 まだ、文庫で出ていると思うので、読まれたことのない方は、ぜひ、ご一読を。

 個人的には直木賞をとった「クー」より好きです。

 で、その中で、景山氏は、昨今の(といっても、もう二十年近く前か)若者の、やたらVサインを出す風潮苦々しく思うと告白している。

 ダイビングの好きな氏が、タヒチかどこかで、日本の女性ダイバーたちとたまたま一緒になった。

 さんざんダイブした後で水中で写真撮影をすることになり、彼女たちがVサインを出したとたん、カメラを構えるタヒチのダイバーが浮き足立ったと、愉快そうに書いている。

 わたしは、沖縄での体験ダイビングしかしたことがないので、よく知らないのだが、ダイバーサインで、(下向きの)Vのマークは鮫の歯を意味するらしい。つまり鮫の襲来だ。



 わたしも、写真撮影のたびに、バカみたいにVサインをする風潮は好きではない。

 若者だけなら、若気のイタリというヤツで我慢はできるが、イイトシをした老人たちまで写真撮影の時にVサインをするのが理解できない。

 なんなのだ、あれは。

 その気持ちは今に始まったものではない。

 中学の時も、高校の時も、大学の時も、会社員の時も、そして自営業の今もどういうものか、と思い続けてきた。

 あのVサインはいったい何を意味しているのだろう。

 フラワー・ムーヴメントから始まる、ヒッピー・ムーヴメント「ラブ アンド ピース」の影響か?

 歴史的にみると、その発祥は、あの100年戦争時だというのだから根は深そうだ。




 Vサインを西の横綱とすれば、東の雄はOKサインだ。

 その他に、
 指をかぎ爪がたにする「盗人」サイン。
 OKサインで、手の甲を下に向ける「ゼニ(金)」のサイン。
 小指を立てる「愛人」のサイン。
 親指を立てる「パパさん」のサイン。
 手話でも、その語源になったものがたくさんあるが今は横に置いておく。


 さて、親指と人差し指を丸くくっつけるOKのサイン

 先日の「毎日の余録」に載っていたが、諸説ある語源のうちのひとつに、アメリカ第7代大統領、アンドリュー・ジャクソンが使い始めた、というものがあるらしい。

 庶民出身のジャクソンは、字の読み書きが苦手で、自分の署名にすら苦労したそうだ。

 その彼が、「了承」を意味する「ALL CORRECT」を、スペル違いのOKと略したことから、この表記、サインが広まったのだという。

 上でも書いたが、小指を立てるOKサインも、手の甲を下に向けると「ゼニ」サインになる。

 OKは、「普通の人」が大統領になれる米国民主主義を代表する存在となったジャクソンが生み出した。

 だが、その後の政治家は、小指を立てるOKではなく、手の甲を下に向けるゼニ(金)サインに振り回されているように、わたしには見える。



-追記-
 同じエッセイ集で、自分には人に見えないもの(霊魂)が見える、と多少の自虐を込めて告白していた景山民夫は、のちにある宗教団体に入信し、広告塔となり、タバコの火の不始末による(とされる)不審火に巻かれて死んでしまった。
 もう少し生きて、わたしと一緒にVサインを憤って欲しかったのに、残念だ。


 私のおすすめ:
食わせろ!! (講談社文庫)

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