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2008年10月13日 (月)

黒塚−KUROZUKA−  伝奇になれなかった格闘モノ




 アニマックスで、開局10周年記念作品と銘打って「黒塚 KUROZUKA」が始まった。

 何となく第1回目を録って流し観してみたが、画面が黒過ぎてよくわからない。

 絵柄(エガラ)は、この間終わった「ウルトラ・バイオレット コード044」に似て、あまり好きではないが……

 これからも録りつづけるかどうか判断したかったので、コミックを全巻読んでみた。




 以下、ネタバレ多数ですので、本編を楽しみたい人は読まないでください。
 
 

 コミック喫茶で、どの棚にあるのか調べようと検索すると、「くろづか」では出てこず、KUROZUKAと打ってはじめて出てきたのには驚いた。ひらがなで検索するときは「くろずか」と打たないとダメなのだ。黒酢か……
 
 そういえば、アニマックスのタイトルも「KUROZUKA」となっていたから、まあ、そういうことなのだろう。
 
 だが、なんだかちょっと気持ち悪いな。
 
 日本の言葉は、もともと音ではじまり、それに外来の漢字を当てはめたものではあるが、黒塚は明らかに「くろづか」であり、「くろずか」ではないはずだ。

 ひょっとしたら、能の「黒塚」とは違うぞ、という意思表示なのかもしれないが、そんなことしても無意味だ。


 
 ともかく、夢枕獏作「KUROZUKA」
  
 結論は、はっきりいうとがっかりでした。

 
 デキアイの、しかも手垢がつきまくったギミックエピソード、それに「なんにょのおんねん」(男女の怨念)の数々……

 そりゃまぁ、もともと夢枕氏が「『能』の黒塚」をモチーフに、現代劇の原案を作って欲しいといわれて書いた話だから、仕方がないのかもしれないが……

 少しは、センスオブワンダーが欲しかったな。

 今から数百年まえ、不死者である八百比丘尼、安達原の鬼婆(見た目は若いけど)(名前は黒蜜:クロミツ)は、吸血鬼なのだが(個人的には人魚の肉を食べたってのほうが好きだ)、都から逃れてきた源義経(以後、名前はクロウ)を好きになって仲間にし……

って、なんとなくポーの一族の出来の悪いレプリカだな。
 
 原作は知らないが、コミックの方は、時代があっちこっちに飛びすぎて、どうなってるのか、わたしゴトキの頭ではよくわかりにくい。
 
 プロット上の工夫をあえて言えば、クロミツから血を分けられて完全不死化する前に首を切られたために、ヨシツネが完全体になれず、数百年ごとに体を代えなければならない、というところか。

 しかし、首を撥(は)ねたのが、あの武蔵坊弁慶で、それはクロミツを好きになったから、というのはいただけない

 古(いにしえ)の人間の思想考え方現代人の思考で考えると無理があると思うのだ。

 たとえば、現代人なら平気で仏壇を足蹴(あしげ)にして、小便をかけるくらいのことはやれるだろう。

 だが、何百年も前の人間にとっては、それは飛行機なしで空を飛ぶのと同じくらい、物理現象のように絶対不可能なことなのだ。

 なにが言いたいかというと、自分の命や立身出世などのためならともかく、義経のころの、しかも武士(もののふ)に属する男が、この場合は漢(おとこ)と書くべきかもしれないが、たかがオンナのために、(いや、当時の思考方法では、ね。今に生きるわたしは女性のためならやりますよ、いろいろと)、レンアイのために義をすてることは、水が下から上へ落ちていくようにありえないはずなのだ。

 そういった気持ちをハラに飲み込んで、なおかつ、いや、それほどに良いオンナだったのだ、と描けばよいが、「黒塚」では、まるで現代劇のような軽い扱い弁慶に裏切りをさせている。ペラペラだ。

 なんだかな。

 
 あと、他人の肉体という軛(クビキ)のためか、体が年老いて、あるいは傷ついて使えなくなって、生首の時だけ、かつてクロミツを愛し不死者となった義経としての記憶が蘇り、それ以外の五体満足(って使っていいのかな)の時は記憶喪失状態となって、毎回、体をすげかえる度にクロミツが過去を教えなければならない……
 
 という設定もよかったけど、それをうまくドラマに取り込めてなかったな。


 やがて、あっというまに現代から未来に時は流れ、人類は壊滅目前になる。これも唐突ありきたりな感じだ。


 その理由が、巨大なインセキが飛んできて、それをミサイルで爆破したものの、ハヘンが地上に降りそそいだ結果、いわゆる核の冬が起こったっていうのは、あんまりじゃないかな?

 工夫もなにもない。中学2年の子供がデタラメ思いつきで考えたストーリーのようだ。

 近未来になって、ゾロゾロと権力者のクローンが出てくるのも陳腐だなぁ。  
 

 ドラキュラものとしては、『HELLSING(ヘルシング)作者:平野耕太』の方が、絵は見にくいし、ちょっと長く読むのはキツいが、はるかに話がタっている。

 だって、ひとりの不死者の中に、今まで殺戮(さつりく)したすべての人間が閉じ込められているんだよ、ひとり軍隊、いやひとり国家だよ。 
 ソイツがひとり座っているだけで、国がひとつまるごと座布団の上にいるようなものなのだから、こいつはカナリすごいゼ。
 読んでいない方は、ぜひご一読をおすすめします。

 ヘルシング(エイブラハム・ヴァン・ヘルシング教授:吸血鬼ドラキュラ<ブラム・ストーカー>に出てくる吸血鬼ハンターより命名)については、また項を改めてかくつもりです。
 
 
 夢枕氏は時代物が苦手なのか、黒塚は、あっというまに時が経って近未来となった。

 未来の方が、科学力を使った強いバケモノがでてきて、格闘シーンもりあがるからだろうか。

 あるいは、これも陳腐だが、不死の秘密を知りたがる秘密組織が、クローン技術を使って、不死者の血の秘密を部分的に解明し、それを利用して造った、クロウたちに似た(だがそれほど強くない)バケモノを出しやすいからだろうか。
(そういうのって、あのBLOODでも使ってたな、しかも、もっと手際よく)

 だが、科学でつくられたサイボーグらしき敵が「加速装置」を使ったのには、人目もはばからずズッコケそうになるのをこらえなければならなかった。

 いまさら素の加速装置ってないでしょう。
 
 同じ加速装置を使うなら、木城ゆきとが、初代「銃夢」でやったように、光のドップラー偏光とソニック・ブームを伴う「肌で感じる」加速感を出して欲しかった。

 ただ、格闘マンガと古き良き009を足して2でわってx0.001しているような感じだから、どうにもシマらない
 
 どうやら、夢枕氏は本来SF系の作家ではないようだ。
 SFのニオイは好きだが、ホネまで喰らついて味わいたい、というタイプではないのだろう。

 世間的な評価も「格闘系」の作家なんだろうけど……
 
 まだ、菊池秀行氏の方がSFの造詣(ぞうけい)は深そうだ。(文章があまりうまくなく、読んでいて頭が痛くなるのが欠点だが)

 とにかく「黒塚」は、アニマックスがいうような「伝奇もの」ではない
 不死性を持つ挌闘家が、なんか長生きして戦う、って感じかな。

 噂に聞く、オンミョージ(安倍晴明)伝奇モノだと思っていたが、このぶんでは怪しいかもしれない(読んでないけから分からないけど)。

 タイポグラフィ「カエルの死」がデビューの作家だけのことはある。夢枕氏は、文章よりビジュアルの人かもしれない。


 「KUROZUKA」−−−どうせ伝奇にするなら、モチーフにする能「黒塚」よりも「葛城」の方が、よかったかもしれない。
 

 あと、たぶん作者が、読者を驚かせる仕掛けとして、最後にとっておいたであろう、クロミツが不死者となる原因を作った「お方」が、あの人だった、というのも、とってつけたみたいに不発だった。
 
 ヨシツネとクロミツを、長年にわたって追う謎の男も、最初からあいつだろうな、と思ってたら、やっぱりあいつだったし……

 不老だけど、不死でない男と、不死だけど不老でない男、という図式を、もっときっちり出せば、話もちがったかもしれないけれど……格闘大好き人間には、不死だけど不老でない男、つまりものすごーい老人なんてかけないのかもしれない。

 どうせなら、諸星大二郎の「生命の木」のように、知恵の実だけをたべて利口になったモータル男(人類)と、生命の実だけを食べて白痴ながらイモータル(不死)になった男、みたいな対比だったらスゴかったのに。

 
 原作は、もう少しうまく作ってあるのだろうけど、貴重な1時間ちょっとを潰したわたしとしては、さらに原作までも読む気にはなれないな。

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