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2008年10月18日 (土)

げぇむが、こころをはかいする 〜脳内汚染〜


 これは、少し前(2005年)に出版された本ですが、ぜひ、内容を知ってもらいたいのと、文庫化されたので、ここに紹介することにしました。
 
 著者は、医療少年院勤務の精神科医。
 
 仕事柄、彼はあることが気になって調査を行いました。
 
 そして結論を得ました。

 その結論とは……


 その前に、昔ばなしをひとつ。
 
 かつて、高度経済成長期に、日本各地で、いっせいに奇病が多発したことがあります。ある者は呼吸困難におちいり、あるものは骨がもろくなり、起き上がろうと手をついただけで骨が折れました。
 
 いまなら、誰もが、その病名と原因を知っています。
  
 ヤミクモな発展を目指した結果、それに伴う公害が原因となって、人々の体を蝕んだのです。
  
 だが、当時は水俣病の原因が有機水銀であることも、喘息(ぜんそく)の原因が人々の懐をうるおす工場のケムリであるということもわかりませんでした(しばらくすると、社会問題になりましたが)。
  
 公害は、それほどに新しい、社会が生み出した病気の温床であったのです……
  
 今、似たようなことが起こってはいませんか?
  
 現代の人々、特に若年層のコドモたちを中心に蔓延(まんえん)する無関心、無慈悲、残虐さ、他人の痛みを共感することができず、平気でひとを、親ですら傷つけ、殺す異常さは、今までの日本には存在しなかったタイプの社会現象です。
  
 まるで、高度経済成長期の公害のように。
 当時、それは、わけがわからず、'無差別に人々を襲う脅威でした'。
 やがて人々は、大企業が無思慮に垂れ流す廃液、排煙が病気の原因であることを知ります。
 
 でも、初めはなにもできなかった。
 あまりにも工場に依存する生活であったから、表立った非難ができなかったのです。

 もう、誰もが知っている事実でしょう。
 

 そして……実は、昨今の若者の異常行動にも同じ図式が働いています。
 
 皆さんもうすうすは感じておられるはずです。
 子供たちに、昔なくて、今あるモノ
 しかも、大きな影響を与えているモノ
 それが発達してからコドモたちに、奇妙な乱暴さが目立ってきたというモノを。
  
 脳内汚染の著者が調べて分かったのは、それでした。
  
  彼は、ゲームやネット少年犯罪の関連性を詳細に調べたのです。

 「合成された情報の『毒性』が、それにもっともさらされる若者の心や行動に異常を引き起こしている。脳にとっては、物質以上に情報が、物質が体に及ぼすのと同じような有害作用をもちうるのである。我々の脳は、毒物によってだけでなく、有害な情報や疑似体験によっても汚染される」  
 
 その、有害情報というのが、ゲームでありネットであるというのです。

 ゲームによる仮想訓練によって、人の脳内に設定された禁忌プログラムの解除が行われる例として、米軍の新兵訓練の話が紹介されます。
 
「新兵の半数以上は実際に敵に遭遇しても、相手を殺戮することに本能的なブレーキがかかった。発砲して敵を殺すと、強い吐き気を覚えるなどの反応が起きたのである」

 もちろん、これは、人として当然の反応です。
 
「ところが、シミュレーション・ゲームにより、敵を殺戮(さつりく)することを訓練すると、九割以上の者が躊躇(ちゅうちょ)なく敵に向かって引き金を引き、しかも相手が倒れても、動揺することがない

 なんとなく、皆さんもそう感じていませんでしたか?

 たとえ、ゲームであれ何であれ一度、禁忌感(タブー)のレベルを下げてしまえば、人の心は、現実とゲームの区別なく同じタブー・レベルで機能するために、容易に現実で殺人を犯してしまえるのだ、と。
 
 ハナシは少し違いますが、たとえ、ダラダラといい加減でも、避難訓練を一度でもやるのと、やらないのとでは、実際に災害にあった時の、対応の仕方に雲泥の差があるというのも、根の部分で、これとつながっている気がします。

 さらに、ゲーム先進国の日本では、新しく発売されるゲームに中毒性を高める技術が、あの手この手で詰め込まれています。(ゲームをする人ならわかりますね)

「ゲーム開発者は、今にもやられそうな状況を、できるだけリアルに体験させるシチュエーションを作ることで、体にはアドレナリンを、脳内にはドーパミンを溢(あふ)れさせる」

 ドーパミンは脳内麻薬物質だ。それが出っぱなしということは、麻薬的な依存症になるということです。
 
 さらに、ゲームをやりつづけると、覚醒剤を打った人間に、酷似した身体反応が起きるらしい。

 ここ何年か、ざっと思いつくだけで、五指に余るコドモによる残虐事件(尊属殺人を含む)が起きていることはご存知でしょう。
 
 そして、その子供たちが、何を好み、何にふけっていたかも。

 恐ろしいのは、この問題が表に出てこない理由として、メディアにとってゲーム業界は、逆らうことのできないお得意様であるかららしい、ということです。
 
 この図式、さきの公害病に酷似しているとは思いませんか?

 ともかく、皆さんの中で、子供に殺戮ゲームなどを与えている方は、自分もやってきたし、みんなもやっているのだから大丈夫、と思い込まずに、一度、じっくりと考えて見てください。
 
 コドモの脳は、明らかにオトナの脳とは違います。今の親が子供だった時代には、いまほどリアルな殺戮ゲームなどなかったのですから。

 さらに、問題なのは、コドモ時代に学習したことが、半永久的な影響を及ばす可能性があることです。

 著者の資料引用にバイアスがかかっている等の批判もありますが、だからといって彼の主張は、全否定できるものではないと思います。
 
 わたしには子供はいませんが、親であるなら、そして自分自身、ゲームに耽溺(たんでき)しているという自覚があるなら、ぜひ一読することをおすすめします。


 私のおすすめ:
脳内汚染 (文春文庫 お 46-1)

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