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2008年10月 7日 (火)

ひと華咲かせて 〜緒方 拳 死す〜




 緒形 拳が死んだ

 他の人の印象は知らないが、わたしにとって緒形 拳という役者は、妙に脂ぎって精悍で、ちょっと人情家で人懐っこく、トコロにより冷たいデコボクロ役者だった。



 真偽はしらないが、芸名を決める際に「自分の特徴は手だ」といったため、緒方テノヒラコブシといったものが候補にあがり(これじゃジャンケンだよ)、最終的にコブシ(拳)になったものの、皆からケンと呼ばれたために、結局はオガタケンにしたのだという。 その点、「飢餓海峡」の役名を芸名にした三國連太郎とは好対照だ。



 「太閤記」の秀吉、サル役は古過ぎて知らないから、特に、小林桂樹主演ではないテレビ版必殺仕事人の藤枝梅安の印象が強い。(映画「復讐するは我にあり」も悪くはないが、原作の方が優れているように思うので:あ、これって三國との共演だ)




 最近の彼の姿を「おみやさん(って古い?今は渡瀬恒彦?)」などでは見かけてはいたが(ナナメ観だが)、なんだかすっかり良い人になって覇気・元気共になくなったナァと感じて少し寂しい気がしたものだった。

 息子も世界遺産やCM(CF?どっちだ?)のナレーションなどで活路を見出しているし、心配もなくなったから枯れちゃったのかな、と思っていたら、晩年に彼は復活したのだった。

 その役で、彼は悪役を生き生きと役者らしく演じていた。

 「隠し剣鬼の爪」のワル家老だ。

 小林稔侍演じる腰巾着とともに、自分勝手に癇癪(かんしゃく)を起こし(キレるって言い方は安易でキショク悪いから使わない)、意地悪く主人公を足蹴(あしげ)にし、人妻を騙して犯し、そして最後に鬼の爪によって暗殺される。

 しばらく「良い人」が続き、なんだか気が抜けたような演技(まあ、テレビも邦画もあまり観ないから偉そうには言えないんだが)が続いていた緒方が、枯れてはいるものの、久しぶりに見せた生きた演技だった。

 たとえていうと、檻の中で、すっかり弱った老熊が、空を飛ぶ鷹を見て、突然立ち上がり、吼え、往年の激しさを一瞬だけ垣間見せた、という感じかな?その後すぐに、ぐったりと寝ちゃうんだけど……


 なにより、ワル役を楽しんで演じている気持ちが伝わってくるようで、わたしは嬉しかったのだ。

 今思えば、あの、「鬼の爪」に刺されてからしばらく歩き、そのままスッコロンデ死んだ死に様こそが「俳優」緒形拳の到達点だったのではないだろうか。

 ここ数年、肝臓を悪くして闘病していたらしいが、最近も製作発表に顔を見せていたので、唐突な死という印象は否めないが、突然の訃報は、ワル家老の死に方に似て、いかにも緒方らしい死に様のように、わたしには思えるのだ。

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