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2005年7月16日 (土)

「オールド・ボーイ」


 これは、日本のコミックが原作の韓国映画である。
 原作者の土屋ガロンは、70年代後半からコミック原作で活躍中の狩撫麻礼の別名。
 元来、「泣き」がメインテーマであることが多い韓国映画はどうも苦手だが、新聞の映画レビューで、この作品の設定が「突然、理由もなく拉致され、15年も監禁された男」であることを知って以来、是非見たいと思っていた。

 が、記事を見たのは昨年のことだが、知らぬ間に上映が終わっていたので、劇場で観ることは叶わなかった。

 仕方がないので、まず全九巻の原作を読んでみた。

 いかにも狩撫麻礼らしい、主人公が、アウトサイダーとしての自分を意識しすぎる、頭デッカチの内容で、なんということはない作品だ。
 狩撫作品にはよくあることだが、魅力的な設定は思いついたものの、それを秀作に昇華させることに失敗したという印象だった。

 特に、物語の核をなす「謎」、何の敵もいないただの男を、10年間(映画は15年、その差は5年だが、そこに大きな意味がある)もの間、ヤクザが経営する私設刑務所に監禁したのか、という理由が、いかにも文化退廃爛熟のニッポンならではのものだったのがいけなかった。

 主人公を陥れた犯人は、天才であり、自意識過剰であり、病的であり、刹那的、しかも臆病者かつ大胆なヤツだった。

 おまけに、若くして事業に成功した天才実業家。

 そいつが、小学生の時に、ある事件で主人公によって、いたくプライドを傷つけられた。つまりそれが動機なのだ。

「そんなヤツおらんし、そんな動機あらへんわ!ウソくさっ!」

 これが読み終わった感想だった。


 で、期待せずに、先日発売されたDVDを観てみた。

 ううむ。違う、違うぞ。映画版は違う。全く違う。動機が違う。目的が違う。迫力が違う。

 大作JSA(観てないが)を撮った監督は、今回は、小粒ながらも、鋭角的でスタイリッシュな演出、映像で、いきなり観る者の心を鷲掴みにする。

 小デブで乱暴者の主人公(30)は、娘の誕生日に、天使の羽のプレゼントを買った帰り、乱闘騒ぎを起こして、警察で注意後、釈放されるが、身元引受人の友人がほんの少し目を離した隙に、姿を消してしまう。

 正体不明の男に拉致されたのだ。

 以来、15年間、密室に置かれたテレビで知識を吸収し、肉体を鍛えあげ、イメージ・トレーニングで格闘センスを磨いた男は、突然の解放後、街のチンピラに喧嘩をしかけ、自らの肉体が、復讐の武器となり得ることを確認する。

 チンピラからカツアゲた金で、日本料理店に入り、ウニュウニョとうごめく生ダコに咬みつき、食い千切る主人公の怪演は、韓国のナヲト・タケナカとでも言いたいぐらいに濃く、クドい。

 が、ここで諦めては、先の楽しみはない。

 その後、ジェット・コースターのようにストーリーが走り去り、エンドクレジットが流れた時、登場人物のすべての行動に矛盾がなく、伏線はきれいにつながり、犯人の動機に大きく共感し、そしてなお、運命の残酷さに我々は言葉を失うだろう。
 分かってなお、「何故」男が十五年の間、幽閉されなければならなかったか、という謎は輝きを失わない。

 本作は、2004年カンヌ映画祭で、次点であるグランプリを取った作品だが、最高賞であるパルムドールが、多分に政治的配慮によって「華氏911」に与えられてしまったことを考えれば、これは間違いなくパルムドール・クラスの作品だろう。

 ひと目観るなり、ハリウッドが再映画化権を買い取ったのも頷ける。


 同時期、日本では「誰も知らない」が主演男優賞を撮ったために、その快挙に隠れて、「オールド・ボーイ」が話題に上らなかったのは返すがえすも残念だ。

 しかしながら、わかりやすく悲しい映画版の動機を、どれほどの現代日本人が腹の底から納得するだろうか?

 あるいは、コミック版の観念的な動機の方を、今の日本人は好むかもしれない。


 ともかく、機会があれば、観よ!「オールド・ボーイ」



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