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2005年7月26日 (火)

モンスターズ インク

 題名だけみると「トラのパンツ」みたいだが(なんて誰も思わないか)、これは久しぶりに見たデズニの傑作です。

 近年、ライオンキング、アトランティスなど、日本のアニメの盗作ばかりする上に、幼稚園で描かれた落書きにすら著作権を要求するシャイロックのような性質が鼻につきがちだったデズニが、五人の協同脚本(含監督)で生み出した傑作が、この怪物インクです。

 邦訳すれば「怪物会社(結社)」となって、まるで「唐獅子株式会社」みたいになるから、邦題はそのままカタカナ読みにしたのでしょうが、文字を見ないで音だけ聞いたら、ほとんどの人は魔法のインクと思ってしまうだろうな。

 設定は、素晴らしく斬新、ということもないが、きれいに収まっているし、トイストーリーのように、荒唐無稽ではないから(人間がいなくなったら突然おもちゃが動き出すってことですよ)感情移入しやすい。

 とくに、主人公の巨人サリーの友人「ギョロメちゃん」のキャラクターがいい。
 彼は、CGのくせに、ボケ、ツッコミ、カワシときちんと演技をしている。
 「ジャングルの王者 ターちゃん」の猿のエテ吉のように、脇をきちんとした芸達者で固めているからこそ、ただ人(モンスター?)が良いだけの主人公サリーのガンバリと優しさが際だって伝わってきて、最後に心地よい感動を感じることができるのだ。

 子供の悲鳴をエネルギーとして活動する世界、というのは、似たような設定が以前にもあったから斬新ではないといったのだが、そのために、モンスターたちが、日夜シミュレーションを使って訓練していたり、悲鳴を上げさせるべく人間界に出かける彼らの勇姿がアルマゲドンのパクリだったりするのはお遊びとしてもなかなかイイ。
 人間世界の汚染物質がモンスターワールドに持ち込まれると現れる緊急処置班のモノモノしさも滑稽だし(これはETかアウトブレイクのパロディだな)。

 そうか!自分で書いていて、今気づいた。
 インクは、「パクリ」ではなく、過去のおもしろい映画を「パロディ」として堂々と取り入れているのだ。

 ドラエモンの「どこでもドア」にインスパイアされたであろう(ま、彼らは認めんだろうが)扉を通じて人間界に行き来するのも、のちのジェットコースター場面(観た人はわかるね?)の伏線としては申し分ない。

 なによりエンディングで流れるのが、わざわざ作ったNG集と、ギョロメちゃんが、本編内で言い逃れにつかったミュージカル劇であるのが秀逸だ。

 乗せられているとわかっていても、見終わって、さわやかな気分になれる。
 本当にこれはデズニ映画か?

 あとは、数多くのドアがレールを流れていくアトラクションがランドに登場するのを待つだけだ。
 きっとそのつもりであのシーンは作られているだろうから。
 願わくば、現在のではない、古い方のピーターパンのアトラクションのような、フワフワと空を飛ぶアトラクションとして具現化してもらいたいものだ。

 気のいいモンスターたちの暮らすモンスターワールドは、笑顔と笑いに満ちた明るい桃源郷だ。
 子供たちはペイヴメントで遊び、すれ違う人々は明るい笑顔で挨拶をかわす。
 これなぞは、よほどイナカにいかないとステイツでは見ることのできない光景だろう。

 この映画のもっともすばらしい功績は、映画をみた子供たち(大人もだ)の多くが、夜中の子供部屋で、ぼんやり光るクローゼットや、少し開いたドアを怖がることが少なくなるだろうという点だ。

 扉の後ろにいるのは、恐ろしい怪物ではなく、気のいいモンスターたちなのだ、と、モンスターズインクは確信させてくれる。
 こういう刷り込みこそが、無用の神経質な恐怖感を子供から取り除く良い方法なのだ。

 世の中に、人を脅かして人気をとる映画や番組は多いが、その逆は少ない。(キョーイクに良いと一般的に思われている、今までのデズニ映画すらが、ほとんどがそうではなかった)

 その意味で、この映画は、デズニの記念碑的作品と呼んでもよいだろう。

 もし、わたしに子供がいれば、迷わずに観せるだろうなぁ。

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