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2005年7月26日 (火)

TRUST ME!

「Trust me!」
 英語文化圏の、小説で、映画で、幾度となく使われる台詞である。
 日本では、こんな言い回しはあまり使わない。
 よしんば使うとしても、「信じなさいって」、というような、ちょっと冗談めかした用法が関の山だろう。

 だが、オーベー人にとって、「信じる」ということは重大である。
 宗教であれ、娘や妻の貞操であれ、犯罪の容疑であれ、彼らは「信じる」か「信じない」かのオルタネティブを常に、他者に、自分につきつけ続けている。

 信じる、信じないは、単なる判断だ。
 しかし、自分が信じるか信じないのではなく、他者から信じてもらいたいということもある。
 もし、個人が、誰かに信じてもらいたいなら、どうすればよいのか?
 証拠があれば見せればいい。
 もし今、証拠がないなら、これからの行動で信じてもらえばよいのだ。

 では、それが個人ではなくて、また、証明もできないならば、どうすればよいだろう。

 アメリカは今、それで苦しんでいるようにみえる。

 アニメ「オネアミスの翼」は、別次元の地球における人類初の成層圏飛行計画の映画だった。
 あの映画と同様に、50年代のアメリカは、当時のソ連に遅れをとった宇宙計画の起死回生を図るため「アポロ計画」をブチあげた。

 「10年で人類を月に送り込む」

 1960年に、そう「あの」ケネディ大統領が宣言した。
 以来9年を経て、アポロは月に着陸した……ことになっている。

 わたしの母は、昔から「宇宙もの」が大好きだった。
 69年のアポロの月着陸の時は、翌日、仕事があったにもかかわらず、徹夜でテレビにかじりついていたという話をよくきかされたものだ。
 私自身は幼かったため、月着陸をリアルタイムで記憶してはいないのだが。

 小松左京がそのときの様子を短編「一生に一度の月」で描いたように、SF作家たちは、「ひょっとしたら、これで俺たちの職業は、あがったりになるかもしれない。なんたって、本当に人類が月に立っちまうんだぜ、おい」と、半分は本気で思うほど興奮しつつテレビを見ていたし、本当に、当時の世界の人々は、NASAの一挙手一投足に注目していたのだ。
 そして、アームストロングがミョーナピョンピョン歩きをするのを、汚い映像で見ながらそろって狂喜した。

 人類は、地球以外の天体に足跡を記し、アメリカはソ連に勝ったのだ……。

 だが、着陸から30年を経て、アメリカの若者の中に、月着陸に対する疑問が膨れ上がってきた。
 なぜなら、かれらは、ヒコーキみたいなロケットもどきで成層圏からかえってくるシャトルは知っていても、地球以外の天体に着陸する宇宙船をリアルタイムで見たことがないからだ。
 初の月面着陸から30余年。
 現在の技術をもってすれば、月着陸など簡単なはずだ。
 なのに、なぜかアメリカは月へ宇宙船を送っていない。(不況と、すでに競争すべきソ連が存在しないというのは考慮に入れるとしても)
 今の豪華なシャトルを使えば、少なくとも月まで行って帰るくらいは容易にできそうだ。
 若者たちの疑問のひとつに、「あんな小さい宇宙船で月までいけるわけがない」というものがある。
 たしかに、受付の黒人女性と大喧嘩したため、悪い思い出しかないワシントンD.C.のスミソニアン博物館で、実物のアポロを見たときに持った第一印象は、「こんな小さなカンオケで月にいけるはずねぇな」というものだった。
 「ライトスタッフ」たる大男が乗り込むには狭すぎる船内だ。

 今や、シャトルしか知らない、宇宙体験の「ロストジェネレーション」たちは、ネットを通じて、月着陸への疑問を募らせている。

 「カプリコン・ワン」という映画をご存知だろうか?
 アメリカが、火星着陸を成し遂げたという報道が世界を駆け巡るが、じつは、着陸の映像は、アリゾナ砂漠にしつらえた撮影所で特撮を駆使して撮ったニセモノだった、という内容の映画だ。

 いま、月着陸が、若い世代から同様の疑いをもたれている。
 残された「証拠」が怪しすぎる、というのだ。

彼らは、
「空気のない月面で星条旗がはためいているのはおかしい」
「違う場所で撮られた写真の背景の形がまるっきり同じだ」
「月着陸船は、まったく炎をふきださずに月から上昇している」
といった疑問を、NASAにつきつけている。

 示された疑問のほとんどは、しごくもっともなもので、答えにはなんだか白を黒と言い含めるうさんくささがある。

 関係者のなかには、あまり目くじらをたてて説明すると、かえって疑われるから無視しろ、という意見もあるらしいが……。

 自国の国民に、彼らが成し遂げた偉業を疑問視されているアメリカやNASAはあわれだが、彼らにも原因がある。

 本当なら、たった一機でいい、月までシャトルを飛ばし、地球にいる数多くのアマチュア天文家に、月付近で光る船体を目撃してもらえばいい。

 わざわざ着陸をせずとも、それだけで、多くの若者の疑問は氷解するだろう。

 だが、アメリカにその気はないようだ。
 あるいはできないのかもしれない……どちらだろうか?

 この上は、2005年に打ち上げ予定の、日本の無人月探査衛星「セレーネ」のカメラ精度を飛躍的に向上させて、月面に放置されているといわれている月面車の写真をとってきてもらうしかない。
 頑張れニッポン……って、頑張りすぎると、どこかの国のサボタージュにあうかも……。

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